とらえどころのない恐怖と狂った「なにか」を見せる多彩な筆

ホラー苦手を公言する私が敢えてお邪魔したのは、同作者の超人気作品「おめでとう、俺は美少女に~」と全くジャンルもテイストも異なる作品を覗き見したかったからだ。
そんな期待に見事に応えてくれた作品だった。
まず冒頭からやられた。一人語りの静けさの中で粛々と進む「なにか」。そして張り巡らされた様々な伏線を拾うには、しっかりと読み込める読解力を求められる息苦しさを覚えるが、最後にそれは見事に昇華される。
言葉の一つ一つも存分に吟味されて仕上げられたのだと思うが、それ以上に、構成による読者の引き込みが上手いと思わず拍手したくなる。
これが人気作家たる所以なのだろう。
また、当初は恋愛ジャンルであったものをホラーに移行されたというのが納得できるまで、さらなる読み込みが必要だったが、読むたびに新たに見出せるものがある作品だった。奥が深い。
☆2つとしたのは、大変僭越ながら、気掛かりな点がひとつあったからだ。僅か数か所ではあるが、言葉の重複がもったいないと感じた。これだけの語彙力を持っておられる方なら、恐らく敢えて意図的になされたことかもしれないと思いつつ、読者の中にそう感じる奴も居たとお伝えすることで、プロへの道を驀進される作者様に些少なりともお役立て頂けたらとの老婆心である。お気に障ったら申し訳ありません。その際はどうか遠慮なく削除してください。

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