「君」と「彼」の間にいる猫のミミはなぜ消えていくのか?

「喪失」をテーマとする連作短編で、「蟻の枝」「蝉の死骸の日記」「これはひどい」、そして表題の「ミミのしっぽ」という4つの話から成っています。

それぞれを独立した話として読むこともできますが、4編を読み通したとき、パズルが完成するように大きなメッセージが浮かび上がってくるように感じました。

正義と利己心、虐待の根源にあるもの、自己と他者……。

簡単には答えを出せない問題について、象徴的で魅力的な場面をいくつも組み合わせることで、押しつけがましくなく考えさせていく。そんな小説だと思います。

読んでいると心がソワソワして、でも、読むのをやめられない感じです。

個人的には「蟻の枝」の最後の場面がとても好きです。「君」と「彼」の間にいる猫のミミが少しずつ消えていく話も、とても感銘を受けました。

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