淫靡で、残酷な、許されぬ愛の証

浮世から隔てられた山の中にひっそりと佇む旧家。そこに出入りする庭師の弟子・利吉は、美しい令嬢・聡子に密かな恋心を抱くようになります。でも、それは叶わぬ恋。ところが、聡子が十八歳になり、縁談が決まったとき、利吉に言います。

「私を連れて、逃げて頂戴」

そして、二人は駆け落ちを試みます。二人のことを誰も知らないところへ。

文章が濃密で、それでいて読みやすいです。情景が目に浮かぶだけでなく、その場の音、匂い、恍惚まで、まるで自分が体験しているかのように感じられました。

痛い場面は本当に痛そうで、淫靡な場面は息を呑むほどにエロティックです。

駆け落ちた先で、二人を待ち受ける残酷な運命とは?

心に焼きつくような物語でした。

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