眠っている間に見た夢を記録できる「ドリームエンコーダー」という機械を通して、曖昧になっていく夢と現実。
ヴィジョンとして浮かび上がる、愛する彼女を襲った悲劇。
いったい何が起きたのか、真実はどこにあるのか。
二転三転する展開からひと時も目が離せず、最後の最後まで結末が予測できませんでした。
本人すらも自覚していない人間の本質や、心の奥に潜む闇。
それらが「ドリームエンコーダー」の記録から徐々に呼び起こされ、自分自身に対して疑心暗鬼になっていくという描写が、凄まじく秀逸でした。
ラストは物哀しさもありながら、どこか救いの風を感じました。
本人すらも自覚していなかった本質——心の中に確かにあった「光」が、見えたような気がしました。
とても面白かったです!
ドリームエンコーダーとは、寝ている間に見る夢を記録する装置。同棲中の勇吾と佐奈は、そこに記録された夢を見ながら、穏やかなゴールデンウィークを過ごしています。
とても幸せ……なはずなのに、不安と焦燥感が消えないのはなぜだろう?
何か大切なことを忘れているような。
そして、ドリームエンコーダーには1つ削除されている夢があって……。
夢と現実を行き来しつつ、物語は二転三転していきます。
サスペンスホラーとある通り、予想のつかない展開にハラハラさせられるのですが、それ以上に、この物語は優しさに溢れていると私は感じました。特に、勇吾が最後が取った行動には、読み終わって一晩経った今も心がじーんとしているほどです。
繊細に、知的に組み立てられた、哀しくて優しい愛の物語。作中の時間と重なるゴールデンウィーク中はもちろん、いつ読んでも素晴らしい作品だと思います。