さあ、私の背を焼き、解放して――。

 山の集落の中でも、ひときわ目を引く屋敷があった。門には蛇の意匠が施されていた。漁村出身の主人公は庭師として、その門のある屋敷にやってきた。その屋敷で出会ったのは、美しい少女だった。言葉を交わすようになった二人のところに、家長の青年が現れる。そして、少女に突然縁談が持ち上がる。
 少女は主人公に頼んで屋敷から抜け出す。
 そして「海が見たい」という少女の願いを叶えるべく、二人で浜辺に行くのだが、そこで主人公が見たものは、少女を縛り続けるあるものだった。
 宿に泊まった主人公は、少女の本当の想いを知る。
 本当の意味で、少女を縛っていたのは――。

 古風な語り口で、描かれる背徳とその情景が美しい。
 まるで純文学の貫録がある文章だ。

 二人の行きつく先を、是非ご覧ください。

 是非、是非、御一読下さい。

その他のおすすめレビュー

夷也荊さんの他のおすすめレビュー1,202