少女に刻印されし呪い。解放される日はくるのか。すべては月に見られていた

少女が若者に「背負わせた」もの。
少女が呪いのように「背負う」もの。
それらは絡み合う蛇の如く運命に蔓延って、解かれる術はないのでしょうか。

白い肌に絹の黒髪。寒牡丹を思わせる美しき少女。
いかにも儚げな彼女の目が宿す強かな光は、地獄に燃ゆる火のように、不吉なまでに美しい。
心の揺らぎをそのまま顕在化させる目は、或る青年を前にした時、自我を無くしたかの如く頼りない、びいどろ玉になる。

冒頭に浮かぶ月の視点で描かれたともとれる文体は、序盤、少女の心を隠して進む。
ぷつんと少女の下駄の鼻緒が切れた途端、舞台にそそぐ真円の月の光は増して、彼女を縛る呪いの正体を炙り出す。
佳境、秘匿されていたものが解かれてゆく場面の描写は、凄まじく激しい。
業火のようなスポットライトは、人々を何処まで燃やすのか。

猛暑の夜に、あえて読みたい、美の炎を内包して輝く端麗な物語です。
月は何を見ていたか。月に何を見られていたか。
是非、ご自身の目で見届けてください。

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