最初から最後まで、空気感がとても良く、文章力に圧倒されながら拝読した作品。
宇宙論的な話題を持って来ると、分かりにくかったり、知識が追い付かなかったり、作品がまさに空中分解してしまうことが多々ある。しかしこの作品は、その宇宙論的で哲学的な会話を、巧く文章に溶かしている。そして研ぎ澄まされた文章には蛇足的な部分が一切なく、主人公と女性の関係性や置かれている立場、何気ない会話が独特の雰囲気の中に成立している。
言葉の隅々が整っていて、主人公の考察的な部分は知的であるが、聞いていて嫌味はなく、むしろ心地よい。大げさでない風景描写と、主人公と女性との関係性もまた、引き込まれる要素となっている。
この作品には、きっと小生がどんなに言葉を尽くしても届かない。だから、読むしかない。この空気感は言葉では言い表せないのだ。「読む」というよりも「感じる」に近い作品だった。
是非、是非、御一読ください。