人の本質に肉薄する短編集
- ★★★ Excellent!!!
この四篇の物語、特に表題にして最後を飾る「ミミのしっぽ」は、一見して何の繋がりも無いように思われますが、そこで描き出そうとしているものはある種共通した、人間の本質なのだろうと思います。
個人的にはより繋がりの明瞭な前三篇が好みで、中でも「これはひどい」の作中にある舞台劇などは、そのエンタメ性、露悪性など、このままどこかの劇場で上演されていたら凄まじい反響を呼ぶだろうと思える代物です。僭越ながら、「どこかに持ち込めば良いのに」などと思ってしまいました(笑)
「ミミのしっぽ」は最も難解かつ風味に妖しさを残しつつも、叙情的な余韻を読者に与え、単品でも十分に素晴らしい前三篇を結ぶに相応しい傑作です。