温厚で気弱な、どう見ても戦いに向かない老ボクサー・ロニー。
ボクシングから逃げてインドネシアに来たはずなのに、ボクシングをやめられないアキラ。
そんな二人が挑むのが、売り出し中の東洋太平洋一位・薮田。
ハッキリ言って、勝算なんてあるはずがない。誰もがそう思うだろう。
しかし、アキラたち仲間は、愛する友ロニーを勝たせようと、全力でロニーをサポートする。仲間に支えられたロニーは、たった一人ではどうしようもできなかった困難や試練、そして、自分をつきまとう暗い過去にも打ち勝ち、宿敵・薮田が待つ日本へと渡る――。
作中で、ある登場人物がこう語る。
戦いは、スピリッツ、テクニック、フィジカルだけでは勝てない。人との縁を繋ぐことができる選手こそがいい結果を残せるのだと。
そして、ロニーは仲間たちから「ロニーに勝たせたい。あいつの望みをかなえてやりたい」と心の底から思わせるほど熱く愛されるボクサーであり、読者からも愛される老いたヒーローだった。
そうだ。読者である私までもが、人を惹きつける不思議な魅力を持ったロニーを愛してしまっていたのだ。
「勝って欲しい…。俺はロニーというボクサーに惚れちまったんだ!」
物語を読みながら、何度心の中でそう叫んだことか……!
読者も、アキラたちも、リングの上で薮田と殴りあうロニーを必死に応援する。
ロニーは、ボクシング仲間たちの想いを拳に込めて、必殺の右カウンターを薮田に喰らわせようと死闘を繰り広げる。
その白熱の戦い……このレビューを読んだあなたにもぜひ体験して欲しい。
この小説は、あまりにも熱い。
ボクシングから逃げたいはずなのに、苦しくてやめたいはずなのに、逃げられないし続けたいと願ってボロボロになりながら前へと進んで行くボクシング人たちの熱い物語なのだ。
そして、彼らの熱狂は汗臭く、泥臭いはずなのに、思わず涙が出てしまうほどに美しい……。男と男が殴り合う物語なのに涙腺が緩んでしまう場面が多いのは、彼らボクシング人の美しさに読者が魅入られてしまうからなのだろう。
そして、一言伝えておきたいのは、これは「男たち」だけの物語ではないということだ。
インドネシアの美少女エルミや日本人の協力者・弓子など、物語に花を添えてくれるヒロインたちも登場し、男たちの汗臭いドラマの合間に一服の清涼剤となってくれる。彼女たちの恋愛模様も見逃せない。
長々と書いてしまったが、こんな長ったらしいレビューを最後まで読んでくださった方は少なからず男たちの熱いドラマに興味があるはずなので、ぜひとも読んで頂きたい。そして、ロニーと薮田の名試合を深く胸に刻み込んで欲しい。熱いはずなのに、泣けてくるから。
そして、最後にこれだけは言わせて欲しい。
エルミちゃんペロペロ!!(*''▽'')
本作で取り上げられたボクシングに限らず、私たちが普段目にする試合には、鍛錬、苦悩、故障、恐怖、葛藤、友情、声援――言い尽くせないほどの裏側があるはずだ。
これはそんな裏側を克明に描き出した、ドキュメンタリーのような作品です。
舞台はインドネシア、寂れたボクシングジム。
拳を交わすのは闘争心の欠けた呑気な男と、グローブを捨てられない男。
彼らが勝てる見込みのない試合にただ一欠片の勝機を見出し、挑戦するその心意気、そして仲間たちの応援には胸が熱くなります。
スパーリングや試合の描写は息を呑むような臨場感で、技の一つ一つが冴えわたり、飛び散る汗までもが見えるよう。
熱い物語をお求め方には、ぜひこの赤道からの物語をお勧めしたい。
か弱い女子ですもの、ボクシングには興味がなかったの。でも、熱い生き様を見せてくれる背中には、付いていきたくなるでしょう?
物語の舞台は、赤道直下のジャカルタにあるボクシングジム。
何かから逃げ腰なロニー、意図的に日本のボクシングと旧友から顔を背け続けるアキラ、二人の元に挑戦状が届いたことから、彼らの毎日はどんどん温度を上げていくのです。
勝利を目指して。過去を乗り越えて。二人だけでなく、周りの人すら巻き込んで。
ひたすらひたすら熱くなった後に訪れる待ち望んだ瞬間は、叫びと涙無しには迎えられない。
ジャカルタという街の名は、梵語のジャヤ(偉大なる勝利)+カルタ(街)から来ているんだそうな。
その名に似合う、心熱くなる物語です。
寒い日本の冬のお供に、是非お読みになってくださいませ。
まるで映画を観ているかのような、あるいはこの物語の登場人物達と共にリング下で試合を見つめている錯覚に陥るほど、ストーリーに没入できました。
インドネシアの熱気漂う風景と、作者さんお得意の格闘描写、そしてそれぞれの人物にある背景が折り重なって、深く深く物語に熱中することができました。
これまでしてきた事、してこなかった事。良いも悪いも全ての『縁』が収束して、ラストのあの会心のタイトル回収に辿り着いたのだと思います。作品単体としての構成も見事です。
本当に熱い物語で面白かったです。年末年始の寒さを吹き飛ばす、赤道からの熱気を是非とも多くの方に感じて欲しいです。
まず最初に謝罪から。
ボクシングって、身体能力とパワーを駆使して、ただ殴り合うだけのスポーツだと思ってました。
すみませんでした。
というわけで、私と同じように思っていた人は今すぐ読み始めましょう。
きっとびっくりします。
まさかボクシングがこんなにも、頭脳的で知性に満ちたものだとは思っていませんでした。
トレーニングメニュー、食事のバランスから、相手の長所や短所の研究、試合中の咄嗟の判断まで、全てが勝敗の鍵となります。
そして、この作品のすごいところは、それらをリアルに書ききったうえで、極上のスポーツ小説として完成されているところです。
インドネシアに住む33歳のロニーが、仲間たちのサポートを受けて、実力差のある相手に挑戦します。
無謀な挑戦というのは、ジャンルを問わずワクワクするものです。
しかし、いきなり覚醒した!とか仲間の想いが力になる!とか、そういったフィクションにありがちな展開はなく、仲間と共に苦しみながら現実に基づいた成長率で力をつけていきます。
だからこそ読者は、ロニーの試合を一緒になって応援できるのです。
さて、一つだけ予言しましょう。
第四章を読むとき、あなたは観客席にいます。
皆さまもぜひ、この物語に殴られてみては!?
読者を惹きつける冒頭へ、早く辿りつきたいと読む手が止まらなくなる物語です。
実際にボクシングを生で観たことがないぼくが、まるでその場にいるような躍動感、高揚感、臨場感を味わいました。
そして読み終わった後の爽快感と余韻に浸り切り、ああ……と感嘆の声をあげてしまいたくなる!!
この作品に吹く風が痺れるような熱を帯びていて、ぼくの心を躍らせました。
もう、ロニーを応援する手に汗を握ってしまう!!そうだ、そこだ!!そこだ、ロニー!!
共に苦しみ、共に笑い、共に手を叩き、食事をし、眠る。支え合える仲間、そして人の縁。
ただのスポーツ小説ではなく、これは極上の人間ドラマ!!
ドラマは常にあなたを待っている!!
ボクシングなんて興味がないなんて言っているそこのあなたはこれを読むべきです。読んだ後にぼくはもう一度問いましょう。
本当にボクシング、興味ありませんか?と――
それほどまでにあなたの心を強く惹きつける物語、是非お読みください!!面白さは太鼓判です。
ボクシングの海外選手を題材にした作品です。とても熱く、燃えるような勝負が見所のお話です!
あれ、じゃあまるで恋愛の作品にあてたような、僕のレビューのキャッチは何なの?と思われた方もいるかもしれません。
しかしこちらの作品は、まぎれもなく愛の物語だったと、僕は思っているのです。
ボクサーのロニーは、ひとりでした。
それがボクシングを続けることにより、主人公や他の人たちがロニーを強くしようと手を尽くして一生懸命になります。
その絆の美しさが、とても素晴らしいです。そしていつしか、この作品を読んでいる自分まで、ロニーを支える一人になっている気がしてきます。
人付き合いが苦手な僕が、久々に誰かへの愛を感じた瞬間でした。
もちろんスポ根ものとしてもものすごく面白い作品、ぜひ読んでみてください!!
熱い。
胸が躍った。
読みたかったストーリーがここにあった。
没頭して時間を忘れた。
彼らの体は泥臭くて汗にまみれて傷だらけで小汚ない。
肉体を追い詰めて剥き出しになった魂は、この上なくまばゆい。
「美しい」という称賛は、お門違いだと笑われるだろうか。
でも、それ以外に、研ぎ澄まされた彼らを表現する言葉を知らない。
赤道直下の国インドネシア、首都ジャカルタ。
閑古鳥の鳴くボクシングジムに居候する日本人アキラは、
ジムのオーナーである33歳のボクサー、ロニーの無謀に呆れた。
日本から試合の依頼が届くや、ロニーはそれを受けるというのだ。
ロニーは1年以上も試合に出ていない上、年齢が高い。
それなのに、新進気鋭の若い対戦相手とやり合う気でいる。
かつて日本で新人王のタイトルを獲ったアキラに、
勝つために本気でボクシングをしたいのだと、ロニーは訴える。
本気になって初めて気付いたロニーのテクニック、資質、気性。
中途半端にボクシングに引っ掛かっていただけのアキラが、
次第に真剣に、情熱的に、ロニーを鍛えることに向き合っていく。
敵地日本に乗り込んでの対戦まで、わずか3ヶ月。
課題があって、乗り越えていく。
困難が訪れるたび、助っ人もまた現れる。
人が人を裏切らず、友情を確かめ合い、繋がる縁が物語を紡ぐ。
愚直なまでにまっすぐ突き進むスポ根は、とにかく爽やかで熱い。
アキラは日本という裕福な国でボクシングを始め、
やがて事情を抱えて、見知らぬ国インドネシアへ渡った。
インドネシアは発展途上で、日本にはない問題も抱えている。
治安、宗教、生活水準、移民、経済格差、マフィア、テロ組織。
ロニーのボクシングを通じて、アキラの目に映る世界が広がる。
インドネシアという国を見、ロニーの過去を知った。
そして自分の過去を振り返り、人生の在り方を考えた。
現在と未来を照らす少女の笑顔に、幾度も励まされた。
私は、格闘技は知らない。
ボクシングの用語もわからない。
でもボクシングの情景が鮮やかに脳裏に浮かんだのは、
本作の文章が「描写」であって「説明」ではないからだ。
アキラやロニーたちにとって、ボクシングは
単なるスポーツではないのだと感じた。
ボクシングは生き様だ。
薮田との一戦には人生すべてが集約されているようにすら思える。
痛みがあって、弱点があって、限界がある。
だからこそ生まれる、限界すれすれの緊張感と、
限界に挑み続ける輝き、限界突破の痛烈なインパクト。
俺TUEEEは平べったくて、好きじゃないんだ。
熱くて痛くて、本気の本物が描かれている。
エンターテインメントとして、抜群に、すごく好きだ。
ジャディラ・アリ、象を打ち破らんと挑む男たちの勇姿に、
画面のこちら側から、能う限りの拍手と喝采を贈りたい。
打撃系格闘技というと、日本ではまだまだK-1をイメージする人も多いのではないでしょうか。K-1は観客・視聴者側に立った格闘技で、わかり易さ・派手さが求められ、それに則ったルールが定められ、ジャッジが下される競技です。
しかしボクシングは競技者側に立った格闘技。ざっくりと階級が分けられたK-1とは違い、ボクシングのそれはわずか3kg未満で区切られ、全17階級にも及びます。競技者間に体格差が殆ど無く、相手を倒すにはひたすら地道に肉体を鍛え、対戦相手に対する戦術を組み立て、それに従い技術を磨く他ない。その様は大変地道で地味なものです。
本作はその「地道で地味」に丁寧に向き合いながらも、インドネシアのロートルボクサー・ロニーと日本の落ちこぼれ・アキラの心情やドラマなどを織り交ぜて丁寧に練り上げ、「負け犬たちのワンスアゲインもの」として「共感」させてくれます。
果たして負け犬たちと一緒に決戦のリングまで辿り着いた読者は、アキラと共にロニーのセコンドに立ち、興奮と焦燥を何度も味わいながらラウンドを重ねる事でしょう。
インドネシアという舞台設定と、その舞台をちゃんと活かした物語になっているのも、自分には新鮮に感じられました。
P.S.ボクシングとの競技性の違いとしてK-1を引き合いに出しましたが、ボクシングよりは比較的体格差が影響しやすいというだけで、勿論K-1出場選手も地道に研鑽を積んでいるものと思います。
読んでいて胸が、目頭が、熱くなってくる、素晴らしい作品です。
主人公のアキラはインドネシアに渡った日本人元ボクサー。このお話の主役はなんと主人公の友人である、インドネシア人のロニーです。ロニーはやや年のいったボクサーで、気弱。そんなロニーに対して、日本で大ブレイク中のプロボクサーからの試合の依頼が……
日本が敵地という不思議な構図ですが、主人公アキラの過去や、ロニーの成長、日本に辿り着くまでの波乱万丈な物語に手に汗握ります。そしてボクシングの試合の行方……。
本当に手に汗をかきます。とにかくリアルです。
私がリビングのテレビでニュースを見ていて、「あれ? あのテロのことってニュースになってないかな? ……あ、あれは作品内の話か!!(汗)」ってなりました。それくらい真に迫っていてリアリティがあります。
キャラクターたちと呼吸まで一致するような共感性の中でのドラマというのは、そのままそこで追体験させられるような貴重な時間を過ごさせてもらえます。
ぜひ、体験してみてほしい作品です。
皆さんが書いているとおり、これはボクシングの話です。
でも、この話の面白いところは、主人公は選手ではないところ。主人公は、戦う彼を見守り、励まし、練習に付き合う元・ボクサーのアキラ。
はじめは二人だけだったのが、一人二人と仲間が増え、応援する人たちが増え、支える輪が広がっていく様子はジンとしました。
そして、いよいよ運命の試合が近づき、空港に向かった面々。
このあたりから急激に事態は動き出し、インドネシアを発つ前からハラハラしっぱなし。
ボクシングや格闘技が大好きな人はもちろん、いままでそういうものにあまり興味がなく知識もなかった私のような人でも、すんなり入っていけるし読みやすく面白い作品です。
これを読んで、インドネシアに行ってみたくなりました。