一瞬の拳に込める、想い

本作で取り上げられたボクシングに限らず、私たちが普段目にする試合には、鍛錬、苦悩、故障、恐怖、葛藤、友情、声援――言い尽くせないほどの裏側があるはずだ。

これはそんな裏側を克明に描き出した、ドキュメンタリーのような作品です。

舞台はインドネシア、寂れたボクシングジム。
拳を交わすのは闘争心の欠けた呑気な男と、グローブを捨てられない男。
彼らが勝てる見込みのない試合にただ一欠片の勝機を見出し、挑戦するその心意気、そして仲間たちの応援には胸が熱くなります。
スパーリングや試合の描写は息を呑むような臨場感で、技の一つ一つが冴えわたり、飛び散る汗までもが見えるよう。

熱い物語をお求め方には、ぜひこの赤道からの物語をお勧めしたい。

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