最後まで読み切った時、右カウンターをくらうのは、あなた自身だ。

インドネシアなんてバリしか興味ない、ボクシングははじめの一歩をちょっと読んだことがあるくらい、そんな方にお勧めします――。

あらすじに書かれた人物は、まさに自分。
いや、それよりももう少しばかり遠いところにいただろう。
なのに。

こういった作品の『要素』に見事一つも惹かれなかった人物を、否応なしに一気読みさせ、最後の最後までまるごと読者を呑み込んでしまう、とんでもない熱量を持った作品。
それが、この物語だ。

まるでボクサーの肉体のように無駄の削ぎ落とされた文章は読んでいて心地よく、気が付けば作中に没入させてしまう。
なるほど計算されているだろう展開、構成は読者をいつも飽きさせず、そして文章と相まって美しい。
物語のあらゆるところに名言があり、登場人物たちの熱い生き様に胸と目頭が熱くなる。
いつの間にか、作中人物たちを人間として愛してしまうだろうこと請け合いだ。



インドネシアにも、ボクシングにも、微塵も興味がない。故に、物語を楽しむのは難しいだろう、と思っているあなた。
いいだろう。ただし、助言しておく。

最後まで読み切った時、右カウンターをくらうのは、あなた自身だ。

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