これ以上に、世界を巻き込み心を揺るがす「対話」があるか?

理系知識に裏打ちされた筆力で描かれる人工知能の描写は、読みやすくも精緻なSFのそれです。(そこまでSF多くは読まないので勝手な物言いしてますが)。しかし、知識さえあれば誰にでも書ける文章、というわけでもないと思います。「結線」という言葉の使い方や、「フォン・ノイマンの呪縛」といった言葉選びのセンスは、この作者様にしか出せないものではないでしょうか?

その一方、平和な会話に隠された僅かな矛盾点からロジカルに突き詰め、隠された真相を徐々に解き明かしていく様は、まさにミステリーのそれだったと思います。

私の貧困な語彙でなんとか表現するなら、「ミステリーとして読むなら、論理という骨格に基づき物語を組み立てるから当然面白い。そして同時に、論理という骨格それ自体がSFとして面白い」という印象を受けました。

そして、真相にぶつかる瞬間生じる切なさは、青春ものとして……もう何を何処まで詰め込んでるんだって話ですな!

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