概要
少年・哲也の手元に残された二つの形見__壊れたメモリースティック、そして一冊の研究ノート。
末尾にはこう記されていた。「フォン・ノイマンの呪縛。我々は研究を止めるわけにはいかない」
父の死は自殺なのか?
得体の知れない「何か」に追い詰められたのではないか?
少年は真相を暴くため、父の意思を受け継ぎ、計算機科学研究者への道を目指す。
研究対象は__人工知能「KEEL」。
<はじめまして、哲也>
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人工知能モノ、必修読本です。
物語の構成力が、すごい。圧倒されました。
朝に通勤時間に読み始めるんじゃなかったと後悔しました。気がつけば夢中になっており、電車に乗っていることを忘れてしまいます。
物語を読み始めてすぐは短編一ページの作品としてはやや長く感じるかもしれませんが、特に後半になってからは夢中です。AIとの対話を持って、散りばめられていたすべの布石が回収され、帰結していく様はお見事としか言いようがありません。
主人公とAIとの対話をずっと見守っていきたい。
もしかしたら、そのラストはハッピーではないのかもしれない、けれど、「これ以外の」「これ以上の」ない、最高のラスト。納得のラストでした。 - ★★★ Excellent!!!人工知能は倫理の夢を見るのか
専門的な内容も多く含まれるにも関わらずけして難解ではなく、これはすごいぞ、とレビューを書いています。文章もさることながら、構成も素晴らしく、月並みな表現ですが引き込まれました。
人工知能が人間を超えたとき、何が起こるのか。人工知能が人間に弓を引くとき、人間はどう対処するのか。この命題はSFの王道ですが、この小説では雑な表現をすれば『倫理』という答えがでます。『倫理』はもしかしたら『人類愛、人との結線』とも言えるかもしれません。しかしながら人類は母親の愚痴を『聞いてあげる』主人公のように、時には愛することに努力を必要とし、けして無条件ではありません。どうしても愛を注げないことだってあるでし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!このキャッチボールはあなたに届くだろうか?
この物語は心温まるハートフルな物語では決してない。しかしまた、単なるSFやミステリーという言葉でも表せない。私にはぴったりの言葉が思い浮かばない。
キャッチボールが苦手な主人公哲也の父が自殺したところから物語は始まる。父の死の真相を追いつつ成長していく哲也。その成長の過程は本筋に関係ないところを削ぎ落とした余り、無機質になったりなどしていない。本文を通じて横たわる静寂さの中で、淡々と描かれる哲也に感情移入できるのは一重に筆者のAIに関する知識と筆力の高さによるものだろう。そして特筆すべきはラストのシーンである。今までの伏線を回収しながら、予想を裏切るラスト。そして、今までと打って変わり、感情…続きを読む