物語の構成力が、すごい。圧倒されました。
朝に通勤時間に読み始めるんじゃなかったと後悔しました。気がつけば夢中になっており、電車に乗っていることを忘れてしまいます。
物語を読み始めてすぐは短編一ページの作品としてはやや長く感じるかもしれませんが、特に後半になってからは夢中です。AIとの対話を持って、散りばめられていたすべの布石が回収され、帰結していく様はお見事としか言いようがありません。
主人公とAIとの対話をずっと見守っていきたい。
もしかしたら、そのラストはハッピーではないのかもしれない、けれど、「これ以外の」「これ以上の」ない、最高のラスト。納得のラストでした。
専門的な内容も多く含まれるにも関わらずけして難解ではなく、これはすごいぞ、とレビューを書いています。文章もさることながら、構成も素晴らしく、月並みな表現ですが引き込まれました。
人工知能が人間を超えたとき、何が起こるのか。人工知能が人間に弓を引くとき、人間はどう対処するのか。この命題はSFの王道ですが、この小説では雑な表現をすれば『倫理』という答えがでます。『倫理』はもしかしたら『人類愛、人との結線』とも言えるかもしれません。しかしながら人類は母親の愚痴を『聞いてあげる』主人公のように、時には愛することに努力を必要とし、けして無条件ではありません。どうしても愛を注げないことだってあるでしょう。人工知能に教えるべきは無条件で無差別な『倫理』なのに。だからこそ『倫理』を人工知能に教えることができた時、人類は新たな進化を遂げているのかもしれません。
長々と駄文を失礼いたしました。とても面白かったです。
この物語は心温まるハートフルな物語では決してない。しかしまた、単なるSFやミステリーという言葉でも表せない。私にはぴったりの言葉が思い浮かばない。
キャッチボールが苦手な主人公哲也の父が自殺したところから物語は始まる。父の死の真相を追いつつ成長していく哲也。その成長の過程は本筋に関係ないところを削ぎ落とした余り、無機質になったりなどしていない。本文を通じて横たわる静寂さの中で、淡々と描かれる哲也に感情移入できるのは一重に筆者のAIに関する知識と筆力の高さによるものだろう。そして特筆すべきはラストのシーンである。今までの伏線を回収しながら、予想を裏切るラスト。そして、今までと打って変わり、感情的になってしまう哲也。それを、ありありと描く筆者には感嘆してしまう。
一言でこの作品を言い表すことはできないが、自信を持っておすすめできる素晴らしい作品だ。あなたは読み終わったとき、この作品をなんと表現するのだろうか。
なるほど、こんなに心に染み込んでくる。
プログラミングとかアカデミックなあれこれに関しては完全に門外漢で、わたしにとっては敷居の高い世界でした。プログラムがどう進化して現状どういう問題が発生して…という内容も、こんなに詳細に書いていただいているのに実は三割くらいしか理解できませんでした(アホで……ごめんなさい…でも分からんことを、知ったかブリ出来ないんです)。
でも、わたしのごときアホが分からないことをそれなりにとばして読んでも、大筋としては大変納得できました。心も大きく動かされました。やはり、技巧で終らず脈々と血が通う物語だったからだと思います。
勉強になりました。ありがとうございます
SFと聞くと、私は未来の科学の華々しい世界を舞台に繰り広げられる壮大な物語を想像していますが、この作品はそれらとは一線を画しているように思います。
主人公が小学生の頃に父が自殺した事件の真相を追及する。
これだけだと非常にシンプルですが、それに肉付けされた設定が非常に精緻で、求められる知識レベルは、若干高めです。
しかしながら突飛な時代背景では決してなく、近い将来に実際に起こり得そうな、リアリティーを感じさせます。
特に研究の話などは、まるで作者さまの経験をにおわすような、しっかりしたリアルな描写だと思います。
カテゴライズするならSFであると思いますが、その物語の根幹はヒューマンドラマであり、驚愕の真相が分かったとき、思わず落涙してしまいます。
そして作者さまの、他の追随を許さないほどの知識、文章力、構成力、完成度に脱帽してしまうこと間違いないと思います。
難解な言葉もあるので、さらっと読み流すことは出来ないです。ライトな文体ではなく、じっくり精読することが求められますが、換言すれば3万文字未満とは思えない、非常に重厚で濃厚な内容となっており、これ一作で映画が出来てしまいそうなくらいのボリュームを有しています。
あまり長文のレビューを私はしないのですが、一言ではなかなかまとめられないくらいのインパクトと余韻を残してくれました。
間違いなく良作です。素晴らしい作品をありがとうございました。