SFでもあり最高級のヒューマンドラマ&ミステリー

SFと聞くと、私は未来の科学の華々しい世界を舞台に繰り広げられる壮大な物語を想像していますが、この作品はそれらとは一線を画しているように思います。

主人公が小学生の頃に父が自殺した事件の真相を追及する。
これだけだと非常にシンプルですが、それに肉付けされた設定が非常に精緻で、求められる知識レベルは、若干高めです。
しかしながら突飛な時代背景では決してなく、近い将来に実際に起こり得そうな、リアリティーを感じさせます。
特に研究の話などは、まるで作者さまの経験をにおわすような、しっかりしたリアルな描写だと思います。

カテゴライズするならSFであると思いますが、その物語の根幹はヒューマンドラマであり、驚愕の真相が分かったとき、思わず落涙してしまいます。
そして作者さまの、他の追随を許さないほどの知識、文章力、構成力、完成度に脱帽してしまうこと間違いないと思います。

難解な言葉もあるので、さらっと読み流すことは出来ないです。ライトな文体ではなく、じっくり精読することが求められますが、換言すれば3万文字未満とは思えない、非常に重厚で濃厚な内容となっており、これ一作で映画が出来てしまいそうなくらいのボリュームを有しています。

あまり長文のレビューを私はしないのですが、一言ではなかなかまとめられないくらいのインパクトと余韻を残してくれました。
間違いなく良作です。素晴らしい作品をありがとうございました。

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