他の方のレビューでも既に言われていることですが、とにかく『完成度が高い』です。その一言に尽きます。
物語の起承転結から始まり、豊富かつ論理的な格闘技の描写、それらの知識を初心者にも分かりやすく表現できる技術など、あらゆる面で隙のないハイクオリティな作品でした。
そのおかげで物語の世界に夢中で没入することができ、空を切る拳や脚、ほとばしる汗、真夏の沖縄より熱い王道青春ストーリーを心から楽しませてもらえました。
リアリティと深みのある作品でありながら、細かい部分で読者への受け皿を大きくしているライトな気遣いなど、『読みやすさ』という部分でも一級品でした。是非とも、カクヨムに登録した際には一度は読んで欲しい名作です。
爽やかな読後には「自分もこうした物語を描いてみたい」、いやそれよりも正しいフォームで走りこみに行きたい。そう思わせてくれるような名作だったと思います。
本当に、とても面白かったです。
読む前のイメージは、「スポ根」だった。しかし、読み始めてみると、非常にふわふわとした雰囲気で話が展開する。
これは予想と違うのかと思いきや、4話から別の空気が漂い始める。
空気がだんだんと引き締まる感触。
ピシッと「熱い」氷が、体を固めていくように物語が動いていく。
そして、クライマックスには、ふわふわととした雰囲気がどこにもなく、緊張が形になったようなシーンが続いていく。
まさに、柔から剛への物語展開。
――剛柔一体!
それを感じさせてくれる小説だ。
しかも、その緊張感も、エピローグで柔らかくひも解き、これからの主人公たちの未来を感じさせてくれる。
そのため、読後感も非常に良い。
戦闘シーンは、初めの方がたんぱくに感じるが、だんだんと熱が入ってくる。
また軽快なテンポのアクションシーンではなく、まるで詰将棋をやっているようなシーン表現が面白く、アクションシーンが苦手な人の参考になるかもしれない。
ちなみにシーザーくんという、現在ファンタジーとしての存在がユニークだった。
まずは、ひたすらに文章が上手い。
もう本当に、とにかく上手い。
アクション描写ももちろんだし、人物の心情描写、ストーリーを追うテンポや場面転換のタイミング。
読んでるだけで快感を感じられるような、動画が目の前で流れていくような流麗な文章。
そして、「女子高生が格闘技に挑む」というテーマに、努力友情勝利。
それはもう当たり前として、タイトルにもなっている「前に進めば痛くない」という明快かつ、一種哲学的でもあるメッセージ。
私も格闘技経験者ですが、格闘技に対する偏見というのは結構根強いです。
そりゃそうですよね。
なんでわざわざ、好き好んで殴り合うのか。
この平和な時代に。
殴られてでも殴りたいって、変態じゃないのとw
でも、そうじゃないんです。
暴力、その衝動。負の心。
そういったものに、どうしても向き合わなければならない時というのはあります。
武術と言うのは、そうしたものへの向き合い方を教えてくれ、そこに対して「選択肢」を提供してくれるものだと個人的には理解しています。
女子高生が格闘技に挑む。
ありがちで狙ったコンセプトと思うでしょうか?
だけど、この作品はそのことから逃げずに、それがどういうことかを描き切っています。
新人戦の決勝シーンでの攻防。
渋谷での出来ごと。
そして、決戦シーンでのユーハの心の動きと、あのシーン…
武術や格闘技に興味が無い人でも、共感と共に胸が締め付けられるような問題提起に出会うことは間違いありません。
なによりも、この作品には、その提起に対する答えがある。
「前に進めば痛くない!」
読み終わった後でこの言葉を口の中に呟けば、その意味が全く変わっていることに気がつくはずです。
女の子たちが格闘技を通して見ている世界にとてもリアリティが感じられる。
スポ根だと思って読んだら大間違い、濃密な格闘シーンは『前に進んでもやっぱり痛いよ』と思わせるけれども、それが絵的に綺麗であることが、読者をすがすがしい気分にさせる。
そして彼女たちの友情が語られるシーンでは、ああ、可愛いなぁ、青春だよなぁ、と目尻が下がってしまう。
全編通して一番おいしいところを全部かっさらっていくシーサー君の描かれ方がとにかく秀逸。レビュー書き換え前にも書いた事だが、これはアニメにしたいと素直に思った。それくらいシーサー君の存在感が……おいしい。シーサー君グッズが出たら迷わず買う、というかコレクションする!
*読了したのでレビューを書き換えました。
格闘技に己のすべてをぶつける少女達の物語。
とても楽しく読めました。スポ魂小説で定番の友情・努力が綴られ、そして登場人物達が女子という点からか、一味違った印象を受けました。
しかも、この物語はただ単に友情・努力では終わりません。最初は練習に励む主人公達ですが、途中からは彼女達の過去が描かれ、辛い道程が浮かんできます。「あれ? スポ魂じゃなくなる?」なんて読み進めていたら杞憂でした。最後にはスポ魂らしいスッキリとした読了感を迎えてきます。
そして、タイトルも良いですね。これは僕の勝手な思いですが、スポーツをする上で練習はつらいですが、目標があるから苦ではないんです。目標を達成でき、自分の想いが相手にも通じたと感じ時、初めて今までの苦痛が苦痛ではなくなるんです。だからこそ前に進むことを怖がらず、彼女達は最終話で成長できたのではないかな、と感じました。
JKだって戦うんだよ!カッコいんだよ!と、読後に叫びたくなった。
これまで総合格闘技にも武術にも全く縁が無かったが、読んで良かったと心から思った。
そして、そもそも人はなぜ何のために戦うのかという命題に多くのヒントをもらえた秀作だ。戦いの奥にある熱い思い、自らを追い込み、仲間を想う青春の炎にやけどしそうになる。
某所で紹介された折にも気になっていたが、アクションものが苦手なので今頃の読了となったのだが、作者の丁寧な描写力の御蔭で、全く迷子になることなく格闘場面を読み進められた。さすがだ。
またリオ五輪で柔道女子の活躍目覚ましいいま読めたのも、絶妙のタイミングだと思った。
格闘技経験者として本作は共感できる部分がとても多く、作者様の実体験や経験がふんだんに生かされていることが手に取るようにわかります。
鍛えていく上での喜び、悔しさ、そしてなにより自身が成長していく日々の楽しさを、本作品は多くの人に伝えています。
また、個人的に戦闘描写が非常にわかりやすく丁寧で、とても好みです。
リアルな戦闘描写、心理描写といえばいくつか有名な作品が想起されますが、それら有名作品に一歩も劣らぬ内容だと感じました。
格闘物・学園物・青春物のお手本とも言えるような作品です。
まずは一話。ぜひご覧になってみてください!!٩(๑•̀ω•́๑)۶