格闘技の知識、描写、熱意。全てにおいて一級品!
それが、この作品です。
数々の試合のシーンや主人公ユーハの特訓など、あらゆる技術や知識が縦横無尽に駆使されれいて、とにかく作り込みが凄い!
また、格闘技の技術だけでなく、精神面の描写も随所にあり、ここまでのクオリティは作者様が格闘技を愛していなかったらけっして生まれなかったと思われます。
格闘技の小説を書きたいと考えている方はぜひこの作品を読んで参考にしてみてください! きっと得るものがたくさんあると思います!
あと、シーサー君!
ただのマスコットキャラの皮をかぶったエロ親父かと思ったら、最後の最後で「ええー!?」と驚くような活躍をしましたね(*^^*)
それはいいとして、中身おっさんのくせしてユーハの膝の上に乗っているんじゃないよ! そこかわれ!
本作は総合格闘技・武道をテーマにした青春小説です。
親友に引きずられるようにして裏茶道部という名の総合格闘技サークルに入ることになった主人公のユーハでしたが、先輩や親友の試合観戦や、苦い過去との邂逅を通じて、少しずつ自分の意思で戦うということと向き合うようになっていきます。
もっともユーハの“成長”は必ずしも綺麗なものではなく、十二話で示されるような薄暗い感情の発露でもあるということは無視できません。しかし、それまで何かにつけ斜に構えていた少女が、全力で何かに取り組むというのは、ただそれだけで人の心を打つものです。
また、武道が「人を殴り、倒す技術」である以上避けて通れぬ暗い一面をしっかりと描いた点も素晴らしいと思いました。こうした武道の暗い一面は、ユーハの暗い感情とも重なってくるのですが、その上で胸がすくようなさわやかな結末を描いているのも好印象です。この辺り、勝ち負けのある世界での武道・格闘技を取扱いながら、漫画の『刃牙道』や『喧嘩稼業』とはまったく違った場所に着地している点も面白いと感じました。
文章の完成度は高いです。単に平易な文章というだけでなく、シーンごと内容に合わせて緩急や硬軟をつけた書き振りで、メリハリが効いているので、しっかり作品にのめりこむことができると思います。ぴんと空気の張りつめた初めての試合観戦、想像するだに苦しいスパーリングのシーンなどは、特に読みごたえがありました。もちろん豊富な格闘技経験に裏打ちされた(それでいてテンポを落とさないために大胆に情報を削った)バトルシーンも、安定して面白いです。
二点、気になったところを。
一点目は、やはり十二話のある描写ですね。狙いは前述のとおりかなと思うのですが、それにしてもそれまでとのトーンの差に違和感を覚えたのも事実です。
二点目は、シーサー君の扱いです。師匠兼マスコットキャラとして登場する彼は、時に場を和ませ、時に弟子を導き、時に格闘技の技術を解説する名脇役であり、本作には欠かせない存在です。しかし、本作は一貫してユーハとネコ、それにもう一人の人物の友情の物語でもあります、終盤になってシーサー君の役割は脇役を超えたものになるのですが、そのことで、本作の焦点が「ネコらとの友情」と「ユーハとシーサー君の師弟関係」のどちらにあるのか、ぼやけてしまったようにも感じました。
もっともこんなのは些細なことで、総じて面白い作品です。
格闘ものが好きならば、「前に進めば痛くない!」の精神で、是非読んでいただきたく思います。
女の子たちがひたむきに戦う小説。
トレーニングの描写とかすごくリアリティがあります。
ひたむきに頑張る女の子たちの姿というのは誰が見ても美しい。
作者様がこの作品に愛情を注いでいるのは一読してわかります。
小説の技巧的には真っ向からのストレート勝負だと感じました。
小細工してない。好きなものばかりを詰め込んでいる。
作者と読者の距離感を詰めるのって難しいじゃないですか?
(すくなくとも僕は苦労しています)
でも、作者様は伝えたいんですよね。みんなに伝えたいんですよね。その気持ちが小説の枠を超えて、ほとばしっています。
……そもそも題名が『前に進めば痛くない!』ですもんね(汗)。
面白かった――ッ!!
読みやすい文章、非常に丁寧な描写の積み重ね、抜目のない伏線の回収といった高い構成力に加え、スピード感と迫力に満ちたアクションの描写、小難しすぎずすっと頭に入ってくる格闘知識の数々。そして活き活きとした生命力と魅力にあふれた登場人物たち。間違いなく名作です!
地道な特訓の描写は、人によっては退屈かもしれませんが、私は格闘技うんちく満載で面白く読めました。苦しさに耐えながら、なにくそとかじりついて行く主人公ユーハの姿に、拳を握りしめて応援してしまいます。
ストーリーは概ね紹介文にあるとおりに進んでいくのですが、いよいよショーコとの対決となった段に、〝ある不安〟があり――そこからの捻りと返しがまたうまい。非人間的な暴力女といったおもむきだったショーコが、それまでの印象を一気に裏切って素顔を見せるくだりは、伏線の回収と相まってぐぐぐっと引きこまれました。それに合わせて、ネコにもそれまで隠していた事情が明らかになり……。
この作品はタイトルのセンスが素晴らしく「これだけでもう勝ったようなものだな」と思っていたのですが、掛け軸の言葉として作中に登場するそれに対する、ユーハの意識の変遷もまたドラマの良いアクセントです。
キャラクターの成長、努力、勝利、友情。真っ直ぐで美しい、王道の青春が、あまりにも眩しく、爽やかです。とても良い物を読ませていただきました!
素晴らしい作品でした。
まず、文章。
なくても文意が伝わる主語、指示語、接続語等は省かれ、非常に良くトリミングされていて、テンポよくリズミカルな文章になっていました。
それが、臨場感のある試合模様やトレーニング場面につながっていたように感じられました。
軽快な語り口もトリミングされた文章にあっていて、作品の世界観を演出することにも効果的だったと思います。
キャラクターも誰もが個性的で生き生きとし、だけれど奇抜すぎて鼻につくということもなく、
非常にうまくバランスをとって描かれているなと思いました。
それぞれがそれぞれに、地に足のついた悩みを抱えており、
それが彼女たちに現実味と人間らしい魅力を与えていたからかなと思います。
ネコみたいな友達ほしいですw
構成面も良かったです。読み終えるとそれまでの展開にしっかりと1本の筋道が通って今ことが分かり、
また、主人公、ネコ、ショーコの主要3者が全員終盤で繋がるところも巧みでした。
女子格闘技の世界がよく描かれていたことも魅力です。
前述のように、口語体の砕けた文体と書き手の方の格闘技についての豊富な知識、そして日常の描き方によって、
無理なく作品の空気感を作り上げていました。
ネコにショーコが汚い手で勝つ場面は物語を大きく動かす転機として、素晴らしく機能していていました。
また、主人公の特訓の様子が緻密に描かれていたため、
彼女が「前を向いても痛いものは痛い」から「前を向いていれば痛くなくなるはず」そして「この人のように強くなりたい」と変化していく様子に説得力がありました。
特訓描写と心の声が相まって、たいへん力強く成長と挑戦していく気概を感じることが出来ました。
ただ、いくつか気になった点もありました。
まず、文章がよくトリミングされている、と書きましたが、
その一方で、少し削りすぎて、その場面の状態が少しだけ分かりにくくなっている箇所があるように感じられました。
ほとんどが少し後ろを読めば状況を理解できる程度のものなので、あまり大きな問題ではないかも知れませんが、
特に試合中の攻防の様子などは、主語、目的語、指示語など少し加えた方が、すぐにイメージが浮かびやすく臨場感を損なわないかなと思うところが何カ所かありました。
もちろん、前述のように文章をもたつかせないことで臨場感が出ているという側面もあるのですが...
ちょうどいい塩梅を見つけていくのは難しいものですね。
また、一人称について気になった点が二つあります。
一つ目は主人公が総合格闘技初心者にも関わらず、
一人称の地の文で、初めて見る試合においてその内容をかなりよく理解した記述がされていることです。
その分野に精通した人が実況しているような。
内容を読むと、元から見る目があるというのは分かるのですが、
それでも使用する語彙のひとつひとつが素人くさくなくて僅かですが違和感がありました。
こういう部分は、一人称なら主人公の使う語彙などの地の文の変化によっても、その成長が表現された方がいいところなのかなと思います。
見る目がある根拠も、少し弱いように感じました。
私はここは伏線で、主人公には格闘技に詳しい理由があるのかと思ったのですが、
そうではなく、持ち前のセンスと動体視力ということだったので、少しすっきりしない感じが残りました。
二つ目は、地の文の語彙が高校生にしては成熟して感じられてしまった点です。
読みやすく歯切れのいい文章は学生の口語体として成功していると思うのですが、
例えば「大瀑布」という言葉をどれだけの女子高生が知っているのだろう、と。
大人びた人物設定から、そういった言葉を知っていておかしくないと考えたとしても、
読み手側が分からない可能性がある気がします。
大人でも、文章を書いていたり、俳句をやっていたりしていないと、意外と知らない人も多いような...。
ライトノベル的な作品ですし、こういうところは少しもたついたとしても、滝、轟音などの表現を使って描写した方がいいように思いました。
あと、こういった競技を描いた作品で、主人公が初心者であるという設定は、
ストーリー上の効果はもちろんのこと、それ以外にも「その競技に精通していない人でも、よく分かる」という部分があると思いますが、
今回はじめから主人公の理解度が高いことで、少しその効果が薄れてしまっているように思いました。
あと、キッカ先輩が負けてしまうのが少し早いので、ちょっと読んでいてかませ犬的な印象になってしまいました。
もちろん、内容的には最終的に主人公がかなり強いポジションになるのが妥当なので、
それまでの強者は噛ませ犬になって然るべきだと思うのですが、
それを読み手に感じさせてはいけないのかなと。
もう少し間をとることで、「あの先輩が負けるなんて!」という印象が強まり、
噛ませ犬感は減るけれど、噛ませ犬としての効果は高くなるのかなと感じました。
部活の時に前回大会のビデオを見て先輩の実力を知る、など、ワンクッションあると違ったかも知れません。
あとは、試合模様やトレーニングの様子など、たいへん緻密に書かれていますが、
こういった場面を文章のみで表現すると、視覚的な情報がない分、
映画、アニメ、漫画よりも遥かに読み手に負荷がかかると思います。
どれだけうまく書かれていてもそれは変わらないと思います。
この作品は、前述のように私には少しわかりづらい描写があったのですが、
そういった瑕疵に目をつむれば、これ以上ないレベルで描かれていると思います。
でも、私は読んでいて少し疲れました。
せっかくの素晴らしい作品なので、そこで読み手が引き返してしまうのはもったいないですし、
もう少しトレーニングの様子など削ってはどうかと感じます。
しっかりとした練習模様が描かれているからこそ、主人公の変化に感情移入できるのだとは思いますが、
朝霧の中のランニングやウォームアップなどはもう少し筆を抑えられたのではないかなと。
重要な試合、練習は緻密かつ説明もしっかりと、
そうでないところはもう少し文章量を抑えて軽めに、
そういった強弱があると、読みやすくなったような気がします。
ショーコの学校へ行かなくなった理由に、なんとなく違和感を覚えました。
自分を守ってくれる、という発想が私の頭には馴染みませんでした。
彼に会わなくて済むように、学校以外の場所を求めた、そのくらいが自然な気がします。
ただ、守ってくれる、くらいしないとつじつまが合わなくなってしまう気もするので、難しいなと思いました。
と、気になった点はお上手だからこそ出てしまう不具合、という風に私には感じられました。
ああ、すごいのにもったいないな、と良作だからこそいろいろ書きたくなってしまう身の程知らずの感想です(^ω^;);););)
走る事からウオームアップから筋トレと細かい知識をわかりやすく説明口調にならず一人称で語っていく過程が努力と成長過程を表現しています。スポ根小説は初めて読みましたが、最初は入り込めない上に格闘技に馴染みがないためただ字を追っていくだけでした。沖縄辺りからググッと小説の中に引き込まれていきました。やっぱり主人公がやる気になったせいでしょうか。中でも異彩を放ったシーサー君。油断も隙もありません。何にも教えてないのに……決める時は決める。やる時はやる。ただのマスコットではなかった。
ケンカはダメだよね。ズルも。正々堂々と真っ向勝負。恋愛なしの友情と汗と努力の青春ストーリー。
格闘技に詳しい人が書いてると、よく分かる文章でした。戦闘シーンにおける筆力が高いです。空を切る音や衝撃が、演出力高めのエフェクトつきのアニメ絵で脳内再生されました。非常に楽しかったです。
過去にトラウマ抱えて少しすれた感じのする主人公と、天真爛漫でガンガン突き進む相棒というキャラのバランスが良いですね。突っ込みどころ満載のマスコットと人の話聞かない先輩というサブも良い味出してると思います。
個人的には、総合格闘技に身を投じた「裏の理由」の物語。ネコやショーコ(特にネコ)の事情が面白いと感じました。何故ケンカの暴力は駄目で、格闘技を求めたか、ですね。
女子高生の総合格闘技ストーリー。
美少女たちが格闘技に汗を流すわけですが、とにかく作者様の取材力と知識量が半端じゃないです。
さらには主人公ユーハちゃんの、メリハリの効いた一人称。年齢相応の心情描写からコメディパートのツッコミ役まで、スムーズにこなしています。ボキャブラリーも修辞も申し分なし。
物語も正統派を貫きつつ、たまにツボを外して来る緩急の良さが光ります。
一緒にスポーツを始めた友達、頼りになる先輩、おちゃらけた師匠、宿命のライバル…全ての要素が無駄なく交錯し、ユーハちゃんを巻き込んで行く。
宿敵ショーコとの決戦は手に汗握りました。さらに、昨日の敵は今日の友とばかりに、新たな友情を育む熱血スポ根展開。
敵にもドラマがある、細部にまで行き届いた構成力も魅力的です。
文句なし、花丸です。ときどき挿入されるお色気ギャグも絶妙。サービスシーンかつ読者の息抜きも兼ねていて、本当に隙がない作品でした。
こんなに面白いのに、なぜ僕が初レビューなのか。格闘技観戦には興味なかったけど、一気に読んでしまった。心の中でめっちゃ応援した。総合格闘技ってこれほど盛り上がるものなのか。
これは女子にして正解だ。どんなに汗をかいていても、どんなにストイックに訓練していても、汗臭くない。寝技も純粋な目で読むことができた。男だったらムサいだけだ。
単なるスポコンだけじゃなくて、友情も絡んでいるのがいい。女子同士なのに、さらっとしたつきあいなのもまたいい。逆に恋愛要素は皆無。それもいい。
あと、終わり方もよかった。あそこで終わらせておいて正解だ。
何でもいいから格闘技やっておけばよかったなと思った。マジかっこいい。