爽やかな正統派スポーツもの? そんな言葉じゃ収まらない!

まずは、ひたすらに文章が上手い。
もう本当に、とにかく上手い。

アクション描写ももちろんだし、人物の心情描写、ストーリーを追うテンポや場面転換のタイミング。
読んでるだけで快感を感じられるような、動画が目の前で流れていくような流麗な文章。


そして、「女子高生が格闘技に挑む」というテーマに、努力友情勝利。
それはもう当たり前として、タイトルにもなっている「前に進めば痛くない」という明快かつ、一種哲学的でもあるメッセージ。


私も格闘技経験者ですが、格闘技に対する偏見というのは結構根強いです。

そりゃそうですよね。
なんでわざわざ、好き好んで殴り合うのか。
この平和な時代に。
殴られてでも殴りたいって、変態じゃないのとw


でも、そうじゃないんです。

暴力、その衝動。負の心。
そういったものに、どうしても向き合わなければならない時というのはあります。

武術と言うのは、そうしたものへの向き合い方を教えてくれ、そこに対して「選択肢」を提供してくれるものだと個人的には理解しています。


女子高生が格闘技に挑む。

ありがちで狙ったコンセプトと思うでしょうか?
だけど、この作品はそのことから逃げずに、それがどういうことかを描き切っています。


新人戦の決勝シーンでの攻防。

渋谷での出来ごと。

そして、決戦シーンでのユーハの心の動きと、あのシーン…




武術や格闘技に興味が無い人でも、共感と共に胸が締め付けられるような問題提起に出会うことは間違いありません。


なによりも、この作品には、その提起に対する答えがある。


「前に進めば痛くない!」



読み終わった後でこの言葉を口の中に呟けば、その意味が全く変わっていることに気がつくはずです。

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