柔から剛へ。そして柔らかく――文章にも生きる極意

 読む前のイメージは、「スポ根」だった。しかし、読み始めてみると、非常にふわふわとした雰囲気で話が展開する。
 これは予想と違うのかと思いきや、4話から別の空気が漂い始める。
 空気がだんだんと引き締まる感触。
 ピシッと「熱い」氷が、体を固めていくように物語が動いていく。
 そして、クライマックスには、ふわふわととした雰囲気がどこにもなく、緊張が形になったようなシーンが続いていく。
 まさに、柔から剛への物語展開。

 ――剛柔一体!

 それを感じさせてくれる小説だ。
 しかも、その緊張感も、エピローグで柔らかくひも解き、これからの主人公たちの未来を感じさせてくれる。
 そのため、読後感も非常に良い。

 戦闘シーンは、初めの方がたんぱくに感じるが、だんだんと熱が入ってくる。
 また軽快なテンポのアクションシーンではなく、まるで詰将棋をやっているようなシーン表現が面白く、アクションシーンが苦手な人の参考になるかもしれない。

 ちなみにシーザーくんという、現在ファンタジーとしての存在がユニークだった。

その他のおすすめレビュー

芳賀 概夢@コミカライズ連載中さんの他のおすすめレビュー248