結線、という名の絆

何を読むべきか悩む人はこれを読めば良い。幸いにも短編だからすぐ読める。
「人工知能」という1つの生態系について思いを馳せられる作品だ。

物語は主人公の独白の形式で進み、父の死から始まった主人公の半生を追って進む。
文章は読みやすいが、無駄が省かれているわけでもない。感性に訴えかけるコードで紡がれていると思う。
主人公と人工知能「KEEL」とのやり取りも魅力的だ。

後半からクライマックスにかけての追い込みは、登場人物たちの緊張感まで共有できるようだった。
もしかしたら、貴方が研究者としての側面を自身に内包するならば、「KEEL」が決定的な言葉を放つ前に、主人公の父親と同じ結論に至るかもしれない。
残念ながらそれは人間としては倫理的に間違っているだろう。
ーーが、論理に従う研究者としては正しいと思われる。
どちらが良いという話では無いが。

SFとしてパッケージされているが、人間ドラマとしても楽しめる良作。

涙を流せるほど感動できたので、星3つ。

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