好きな人がいること

それは


ぐるぐるとまわる頭の中のコーヒーカップで

わたしひとり雄でも雌でもなくあなたを想い

いつもその寝顔をひと目見たいと焦がれるくせに

横で眠る顔を見て苦しいと感じてしまうこと


息をとめて

二度と吸わないで吐かないで

わたしのために死んで

嘘、いつまでも生きて


最終的には幸せになりたいだとか損はしたくないだとか

叩きつけるような声で喚いておきながら

いつも幸福の最適解に首をかしげてしまうのは

わたしにはいまどうしようもないくらいに


好きなひとがいるということ



隣のいとしき寝顔をまじまじ見ては

どこか別の世界にいるあなたを恋うるのだ

もっともっと言葉を交わしたい

わたしの心から溢れる血であなたをけがしたい


好きだよ愛してるよと上の空でも言えば

まったく同じ言葉が返ってくることに

たまらなく泣きそうになってしまうのは

いつまでもわかりあえることのないわたしたちがひどく矮小に見えるから


それでも

あなたが好きだ

雄でも雌でもないわたしの

実を結ばない愛だ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る