【10】異次元


長身の黒人ひとり異次元に通じる穴のようにたたずむ



触れたものが黄金になる王様を時おり思いあわれに思う



地下鉄で男のカバンが二度三度オレのケツに触れ憎しみを抱く



菓子パンがパンを失いビニールがベッドの上につくる陰影



店長と喧嘩し辞めた織田さんのロッカーの中の油性マジック



行間に鳴いているのが秋の虫 花火が一つの詩であるとして



眠ってる赤子に青のミニカーを握らせ思い直して奪う



上腕に上腕二頭筋はあり君は言い訳せず生きたまえ



年齢がだんだん重くなってくる 三十三 見つめても減らない



「がんばろう東北」雨のトラックにはねとばされた水避けきれず



完全な球を目指して寝る猫の耳が少々はみだしている



自転車の横転による自転車の横転によりごっちゃごちゃごちゃ



あらかじめパンの内部に仕込まれたマーガリンまるで心のように



「おい見ろよ、こいつ卒業文集をもらってすぐに切り刻んでる」



糞ひれば力作だったすぐに写メ真横から写メ少し味みる



どう生きてゆきたいのかだ回り終え独楽は再び紐を巻かれる



音楽を背負った人が乗ってきてしばらく経ってしずかに降りた



太陽が泣いてるマークがあるとしてそんな天気にふさわしい風


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