【22】何をしても間違っているような夜
石ころが海の底へと落ちてゆくさまを思うよ今日のおわりに
三日月の欠けたところに腰かけるみたいにオレを知ろうとするな
108ピースパズルでつくる富士山の頂上ふたつのピースより成る
メガホンを持って応援する者のメガホンの中にある口うごく
自販機のペプシコーラに汗だくの頬で触れたよ青春みたく
注意され、注意されたくないことがわかる返事をしてはずかしい
ソング・フォー・なんにもしたくない夜にスマホを触ってるこの感じ
捨てるのが下手なんじゃなく集めるのが上手いと言ってほしい本棚
「同」という漢字みたいな顔をしたおじさんのいるたこ焼き屋さん
秋が来る 床屋の椅子に重大な秘密があってほしいと思う
スイカ割りをやった記憶は目隠しに覆われていてあの声は父
全力でユリの香りを嗅ぐオレは人間のまま玄関にいる
N君の家が床屋であることをどうして笑ったんだろオレは
まぶしがる顔といやがってる顔の似ていてオレに向けられたそれ
立ち並ぶ夜の桜の一本の一部を特に照らす街灯
うるせえと注意している声だけがオレの耳まで無事たどりつく
何をしても間違っているような夜に縄跳びの音、それも二重跳び
金属が金属を打つ音が五回、六回あってあとは暗闇
母親に今日は三千円貸した春の酸素が鼻から入る
たくさんの子供がしがみついている巨大遊具を正面に立つ
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