小説サイトに短歌を置いた

【21】人として恥ずかしい

〈1〉

宣伝のためのうちわが置いてある四月のくさい部屋に肘つく

〈2〉

どうしても言われたくない欠点を見ない見せない体でふさぐ

〈3〉

母親に無理にやらせたファミコンを思い出す十九時に目覚めて

〈4〉

からだには傷がないけどこころにはあると笑っているいつまでも

〈5〉

抱き上げてしまいたくなる体勢を猫がしていて負けてしまった

〈6〉

ああオレもナナコカードを勧められ断ってああ人間してる

〈7〉

九回の裏についてるバッテンの意味をたずねた昭和の父に

〈8〉

身長差15センチが理想ならオレと釣り合うオール巨人は

〈9〉

名のついたシュートを放つ男の子ウルトラスーパー超ミラクルウルトラスーパーシュート空振り

〈10〉

この当時オレが笑っていたなんて信じ難いが夏の一枚

〈11〉

女子バレー見慣れたころに男子バレー見ると驚く見慣れるまでは

〈12〉

ワンタンメン専門店の前を過ぎ唱えるわんたんめんせんもんてん

〈13〉

逃げる子と追いかける子のひたむきを眺める　売った漫画のように

〈14〉

「ああいうふうになっちゃだめだ」と十歳のころに言われた指をさされて

〈15〉

もう五月なんて言ってるうちにもう六月なんて言ってるうちに

〈16〉

孫どころか子も妻もなく取り出した定規で背中がしがしと掻く

〈17〉

じゃれあって下校してくる三人の近づけば金銭の話だ

〈18〉

人として恥ずかしくないのかという注意で人間感覚もどる

〈19〉

円形の青い標識を歩いてる白い男が明日部屋にくる

〈20〉

まばたきを何秒せずにいられるか競争したね愛する人よ

結社誌 　未来〈1-4〉〈15-17〉

雑誌 　現代短歌〈5〉

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