【14】蹴られ慣れてる下腹部


のたれ死にしたことがある気がしてる照らされてオレンジの歩道橋



幸せなあちらのオレが今ここのこのオレを思いぞっとする夜



ぱぴぷぺのポップコーンに固いのがあって口からいま出すところ



ああ人は諭吉の下に一葉をつくり英世をその下とした



泣きながら叱ってくれる人は去り笑ってごまかす歯の真っ黄色



お父さんにかまわれたくて怪獣の口のあたりで撫でるテーブル



捨ててあるタイヤのなかに雨水が住んでてわりとちゃんとしている



1988年ファミコンで見た青空を今も愛する



どうしようオレに天使が舞い降りたそして始めた受胎告知を



派出所の前に立ってる警官の動かないまま小雨はつづく



メロディーをつけてあくびをした時の下降しようとするそのちから



怒ってるようなあくびでスカスカな一日は終盤にさしかかる



もうすでに少し歪んだ空き缶の蹴られ慣れてる下腹部ですな



雲と雲と雲と雲との戦乱のまっただなかに電信柱



風景を見てるつもりの女生徒と風景であるオレの目が合う



ほとんどの家に入れずほとんどの人にはオレがただのよそもの



君らのはケンソンだろうオレの場合ほんとにダメなんだよ近寄るな



体型のことを言われてひっこめる腹のそれほどでもない動き



ぼくは汽車、汽車なんだぞー! と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く



「魂の転落」とでも題すべき雲を含んで空暮れてゆく


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