【13】震災に


ズダラニズダラズラブニフ袋から取り出すダラズラブニフ愚か



ばらばらなブラスバンドの練習のそのばらばらに聞き入って春



これほどの歯痛に耐えているオレに世界はいやらしいほどしずか



匙なんぞ使わず直に飲みほしてなんぼのものだ煮え湯というのは



クリームの陽のあたる街ここに住む誰もが泣いたことのある人



爆破する音のテレビを物言わぬ男見ているその上に夜



アパートの扉に鍵をかけている女性をオレが電車から見た



プリンセスプリンセスのことを略すときンセスンセスという裏世界



うっかりと入って行くと晩飯をふるまわれそうな灯りの家だ



広告の集合である球場のすごくゆっくりしたファインプレー



おのおのの枝ひんまがる木の下で言われるままの愛であったな



礼というよりはつかのま下を向くくらいでよいと思われている



泣いているある時点から悲しみを維持しようとする力まざまざ



仙台の町にウサギとサンタいて看板を持つ「原発NO」の



「仙台駅」三文字「SENDAI STATION」十三文字で大差がついた



打ち出され釘に転がる銀玉の特にあっさり消えたものへの



近づけば夜のマンホールさざめいていつかは海になりたい汚泥



震災にヤマザキ春のパン祭り景品皿に傷ひとつなし



そこここに空を見ている人がいて青さを喜び合っている夢


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る