【8】全否定/うぬぼれ


とりあえずビール運ばれとりあえず生きてるオレはカルピスを飲む



エアリプのつもりだろうか相手する気にもならんと入力し消す



道場で揃って受け身をとっている透明選手の透明投げに



四種類小袋つけば面倒なカップ麺だと嘆きたくなる



自転車にクルマにそっちの人達に踏みつけられて木の葉晩年



ブレーキが雀の声で鳴く朝の長い下りの坂道を行く



戦場に細川たかしの笑い声 ハッハッハッドカーンハッハッハッドカーン



全否定された生き方貫いてどこまでだって不幸になる気



うぬぼれはオレを支える一本のえらく丈夫で長すぎる杖



マジックで腕に直接書き込んだ時計によれば午後3時です



消防士が横から洗う消防車 春の夕べのやさしい水で



上を向きコンビニに行く空こそが唯一の自然物と見込んで



飛行船彼方に浮けば一日をその影響の元に過ごそう



電線のわずかなたるみこのくらい余裕がないといろいろつらい



自転車に乗る練習をした空き地アパート二つの広さだったか



強風に乗ったら空を飛べるかと木の葉一枚くらいのロマン



暗闇にわれ背後より近づけば女学生の足やや速まりぬ



右から来た仕事を受け流さずにやるムーディー勝山の手を握りしめ



携帯の充電コードに猫がじゃれ引き離したりしている土曜



触ったら噛みつく場所を知っていて触って噛みつかれている月曜


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