【17】裸になれるデブはいいデブ


携帯をカパリと閉じる音さえもすでに懐かしみを帯びながら



薄型のテレビが毎朝映し出す日本列島なめらかな島



遠くには青みがかった街があり青みがかっているオレかなあ



散会の後にプラカードは下がる 危機は今から立ち上がるところ



限界を超えた荷物で下校する中学生の眼のひかり良し



ひとつぶのホクロみたいな天体の中でもぞもぞ終わる一生



ちいさめの大人が乗ったブランコが前後する申し訳程度に



遊びにも緩急があり鉄棒に子供らもたれかかる午後四時



本来は目立つ色だが時を経て自然な色の安全の旗



子を抱いた母親、男、警官のいずれも黒くして夜がくる



石ころがシューズの中に紛れ込み足裏にある今のこころは



なんとまあ。明るく晴れた日曜に泣いてわめいて怒っている子



半袖にしてもずるずる降りてきて長袖になるオレの生活



柄にもなく深刻なことを考えていたら畳がずいぶん近い



イエスに似た外人に道をたずねられ「わかりません」と三回言った



右耳から入れた言葉が左から抜けてすずしい海へと至る



足払いネコにかけても転ばない 裸になれるデブはいいデブ



おじさんのキャリーバッグはおじさんに引かれそのまま男子トイレへ



屋根の上にソーラーパネルを置いている家の子供の歯科矯正具



膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番素晴らしい俺


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