【31】漏らして泣いた




〈1〉

オレの行くときだけ雨がやんでいる予報だったがもう過去のこと


〈2〉

TOKYOは外国人の多い街いずれにしてもみな他人だが


〈3〉

早過ぎと思っていたが遅刻する危機に気がつき心いれかわる


〈4〉

金屏風背負ってしゃべるオレが見る壁は遠くでぼやけるばかり


〈5〉

父ヒロシその生きざまのへらへらをオレの理想にかかげる高く


〈6〉

いま思うキートン山田のひとことは大人になったまる子の声と


〈7〉

目の前を歩く小さなおじさんの口笛のせいでむなしいと知る


〈8〉

投げやりな気分だったがパトカーとすれ違うときややふくらんだ


〈9〉

早く早くとドアを叩いてそののちに漏らして泣いた夜を忘れず


〈10〉

11の「いいね」集まる悪態にオレの短歌はほぼ当てはまる


〈11〉

「エモい」無理「つらみ」も苦手「萌え」をいま六割くらい受け入れたとこ


〈12〉

守りたい自分が別にいないので歌壇名簿に情報おくる


〈13〉

政権とハラスメントの絶望をフォローしすぎた切り捨ててゆく


〈14〉

年号が移るくらいじゃ変わらんよ、人は 奥から牛乳えらぶ


〈15〉

「か」と「め」と「は」と「め」と「は」に分けていたはずが無言で出すし指先で出す




〈1-6〉『未来』

〈7-9〉朝日新聞「あるきだす言葉たち」

〈10-13〉『現代短歌』二月号

〈14〉NHKラジオ第1「NHKジャーナル」ニュースで短歌

〈15〉短詩の風(ツイッター)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る