天然自然では生み出せない純度100%のひどさの塊

ひどい。

それ以上にこの作品を的確に表現する言葉が思い浮かばない。ひどい。起承転結、徹頭徹尾、全方面に渡って余すところなくひどい。しかし、それは同時に驚嘆すべき事柄でもある。このような純度100%ひどさ、綿密な計算なしに到達できるものではないからだ。

自然界に「純水」は存在しない。真にピュアなものはいつも人の叡智によって作られる。もし本作の作者が天然自然に任せて思いついた下劣な言葉を書き殴るだけの人間であったなら、不純物を多く含んだ苦み走るひどさが姿を現して終わったはずだ。作品が作者のたゆまぬ努力に裏打ちされているからこそ、汚れを知らぬ乙女が初めて抱いた恋心のような澄んだひどさが生まれ得る。

さながらコーヒーを一滴ずつドリップするように、頭蓋の中のるつぼを掻きまわして少しずつ少しずつ純粋なひどさを抽出する。やがてコーヒーカップに溜まったそれは珍妙な色をしており、貴方はそれを一見して美味とは思えないだろう。しかし濃厚で芳醇な一風変わった香りが貴方を惹きつけて離さない。果たしてこのようなものが本当に美味いのだろうか。興味半分恐怖半分で口をつけた貴方は、きっと、ほとんど無意識にこう呟くはずだ。

「これはひどい」

是非、ご賞味下さい。

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