白猫を見つめるなかれ [ホラー][怪談][※残酷描写あり]
道が鋭く交差する三角の空き地に、いつも白猫がいる。手入れされずに伸び放題な草むらの中から、必ず僕の方を
猫が時々やる、
いつもだ。いつも白猫がいる。通学の時も帰宅の時も、コンビニへ行く時も塾の帰り道でも、自転車に乗っていても歩いていても他の誰かが一緒にいたとしても、そこにはいつも白猫がいる。わざと何日も別の遠回りの道を選択して習慣から外しても、またこの三角地を通りかかると、白猫がいる。いて、僕を射るように見つめてくる。
父や母や妹や弟や友人に尋ねても、他の時にあの空き地で猫など見かけないという。あそこで猫を見るとしたら、隣に必ず僕がいるという。
何故だ。何故僕だけなのだ。
そうだ、殺そう。もう殺そう。そうしなければ、いつか僕があの視線に
僕は身を守る決意をした。ナイフとハンマーを用意し、町中が寝静まる深夜にひっそりとあの空き地へ向かう。そこには、いつも白猫がいる。
白猫は前と同じように、僕が一定の距離まで近付くと急に毛を逆立てて呻り始めた。近所に響き渡りマンションに共鳴し地面を這い広がるその声が、僕の身体を一度はがんじがらめにしたのだったが、僕は呼吸を粗くしてたくさんの酸素を取り入れエネルギーを燃やし気力を振り絞ると、残る距離を詰めナイフを振りかざして白猫に飛びかかった。
爪に皮膚を裂かれ牙で穴を空けられながら、僕は白猫の喉笛をかっ切った。痙攣する肉塊にハンマーを振り下ろす。振り下ろす。振り下ろす。
誰にも
振り返ると空き地に、白猫がいる。血に汚れていない白猫がいる。一匹、二匹、三匹、今またブロック塀の飾り穴から抜け出して、四匹。五匹になって、あの目で僕を凝視する。
気が遠くなりかけながら、僕は家へ駆け戻った。
翌日、気分が悪くて学校を休んだ僕の部屋に、母が昼食を持ってきてくれた。母はあの空き地で白猫の死体が見つかったと言い、僕の様子をうかがうようにこちらを見つめてくる。僕を探るようなその目の中に、白猫がいる。いて、僕を射るように見つめてくる。
僕は枕の下に手をさし入れ、そこに隠したナイフの柄を握りしめた。
― 了 ―
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