まだ全部読んでないけど、「いいなあ」と思いました。
孤独で無欲な女の子が、スーパーカブと出会い、世界を広げていく、それだけの話ですよね。
サスペンスもミステリーもファンタジーも無い、地味な話ですよね。
でも、「その気持、よくわかる」と共感します。
はじめてバイクで行動に出た時の、不安と興奮。
自分が巨大な力をコントロールしているという喜びと、間違えたら人が死ぬんだというプレッシャーと、世界と自分が変わってしまって、どこまでも走っていけるという自信……
書き方が淡々としてるのも新鮮。
これは……もしかして「ジャンル・ハードボイルド」ですか。
地味な少女が中古ワケありのスーパーカブを買った。
ただそれだけのこと、なのに少女の毎日はこの日を境に変わっていく。
友達もおらず、両親を無くして奨学金で過ごす生活は慎ましやかで、どことなく色に乏しく、閉じられた少女の世界。それが少しずつ、でも確実に色付いて広がり始めていく!
淡々とした文章、生きることに精一杯で愛嬌をどこかに忘れてきたかのような少女、それでも今作がとてつもなく魅力的なのは、そんな日常のちょっとした変化で妙に楽しくなれたり、ワクワクできたりする感覚をスーパーカブで見事に切り取ってみせたからだろう。
スーパーカブに出会った少女がハマったように、この作品に目を通す貴方もきっとハマるに違いない。オススメ。
正直申しますと、とても難しいテーマだと思うのです。
「女子高生がスーパーカブに乗る話」。
物語にするにはあまりにも難しい。
ひと目で読者を惹きつけるキャッチーな要素も乏しい。
でも、読んでしまうのですよね!!!
これはひとえに作者さんの高い筆力、それが存分に発揮された作品であるからに尽きると思うのです。
主人公の天涯孤独おかっぱ女子高生・小熊はもちろんのこと周囲の人間のキャラ立ちもよく、また「スズキ・ハスラー」や「甲州街道」など固有名詞を要所で差し込むことで浮き上がってくる作品の世界観も良い雰囲気を出しています。
素敵な作品に出会えてよかったと、今はただそう感じております。
なんとなく読み始めたら、やめられなくなりました。孤独に鍛えられ、強くならざるをえなかった主人公に鮮やかな青春の彩りをもたらす、名車スーパーカブ。本当にバイクって、ロマンを満載した乗り物ですよね〜。
それにつけても、ものすごい文章力とストーリーテリング力です。完璧なロードムービーが脳裏に浮かびました。
長い物語に見えますが、主人公がゆっくりとカブと一緒に世界を広げていくのを追いかけているうちに、あっという間に読み終えてしまうでしょう。
ニヤリとさせられるのが、ゴーグル・雨具などの小道具類にオイル交換やパンク修理の描写。私は自転車乗りですが、やっぱり専用品はかゆいところに手が届きます。
最後に一言……少年よ、それはカッコ悪すぎる(涙)。