
たった一度の夏。書くことで、日常は特別になる。
2,044 作品
第2回角川つばさ文庫小説賞《金賞》を受賞し、『いみちぇん!』にて児童書デビュー。
その他の主な著作は『星にねがいを!』『サバイバー!!』『いみちぇん!! 廻』『歴史ゴーストバスターズ』。

弾けんばかりのパワフルな作品、静かに描かれた作品、鬱屈した感情がつづられた作品。どの作品を読んでも、皆さんが込めた熱、まぶしさに圧倒されました。
その中で上位に挙げたのは、読者の視点を意識している作品です。全ての情景・言動・心情を説明する必要はありません。読んでくれる人に見せたいところはどこなのか、常に意識を。「説明したいが、あえて書かない」という勇気も大切です。小説は、書き上げた後、練り直して磨いて磨いて、そうしてやっと、内に込めた熱が輝きを放ち始めるのです。あなたの作品の熱を、誰かの胸に正しく伝えられるよう、これからも大事に磨き続けてあげてください。
今回受賞を逃してしまった方々の作品にも、伝えたい強い熱があるのを感じました。それこそが、書き手として最も大事なものだと思います。皆さんはすでにそれをお持ちなのを、どうか誇ってください。今回、その熱に触れられた事がとても幸せでした。
世界観のオリジナリティ、キャラ造形、文章の読みやすさ、ストーリー展開、死角なしのバランスの良い作品でした。その上で小さくまとまらず、「この世界をもっと読みたい」と思わせる力があるのは、とても強いですね。最後のオチまでしっかりと楽しみきらせていただきました。
自分の世界をしっかり持っている作品です。SF設定の説明も無理がなく自然に頭に入ります。兄弟の会話のテンポもよく内容もおもしろいです。ロケットの出発から失敗、空がはりぼてであることに気づくくだりも驚きがあって楽しく、自由を得た二人が歌うラストは余韻が美しく素晴らしかったです。
独白で進められる個性的な話です。怒濤の地の文を止まることなく読ませる力があります。主人公が抱える生きづらさ、身の内にわだかまる熱というモチーフを、水槽・水族館でクールダウンして、また現世に戻っていく。読者も感じたことがあるだろう鬱屈と熱を、五感の描写を通じて生々しく描き出していて、とてもおもしろかったです。
海外翻訳小説のような、洋画を観ているような作品です。最後までハラハラと一気に読ませる展開でした。会話が少なく最小限に抑えられていて、しゃれた言い回しによる説明パートなど、ともすれば鼻につきそうなところも、作者の筆力によって、自分の持ち味・魅力にできている点に感服しました。読み手の感情を引き回す構成も描写も、演出力もお見事でした。
冒頭のインパクトとつかみが抜群でした。意外性のあるキャラ設定、またストーリーの中で語られる自然な情報の出し方に技量を感じました。トクさんの正体についての驚きと、前もってちゃんと張られていた伏線を振り返ることで二回目もわくわく読めました。キャラ造形も文章の読みやすさも、ストーリーラインも、とても良い作品でした。
カラスの生態嘘探知機という設定のおもしろさ。無駄なく心地いいテンポの語りで、するすると読ませてくれました。カラスが憎めないキャラ立ちをしていて楽しく、序盤の主人公が友人のために自己犠牲を厭わず向かうところでしっかり読者の心をつかんでいて、構成も上手いです。世界観、文章力、キャラ作りの巧みさも素晴らしい作品でした。
民話調の語り口と、デート・天使という現代的なモチーフがおもしろいです。ストーリーのおもしろさ、着想のオリジナリティが際立っています。落ちも、納得感と驚きがあり、無駄のない構造が練られた作品でした。
醜女に化粧を施し変身させることに喜びを見いだす主人公。冒頭でしっかりと世界観を説明しつつ、主人公の目的をハッキリさせられている点に、筆力を感じました。場面場面で、主人公の考え・目的の遷移を読み手に確認しながら進んでいくので、読みやすかったです。
コミカルな文章、かわいい展開。まるでマンガを読んでいるような気持ちで楽しく読めました。「ときめかせると花が咲くイケメン」が落とす花を、「花が好きな女子」がかわいそうに思うという、作者のユニークな着眼点が、とてもおもしろいです。やけどしてから急接近する展開にもドキドキしました。
夜蟲の生態についてのアイデアが、ユニークで秀逸でした。夜蟲と人間との関わり方にも納得感があり、その説明の仕方も楽しく、民話や神話を読んでいる気持ちで読み進められました。読書にとりつかれた村人が、「転」で夜蟲退治を始めて、夜が消えてしまう展開も、わくわくさせられました。
SF設定を冒頭でしっかり説明しつつ、かつ重たく感じさせずにストーリーを進めており、情報に過不足がありません。アンデッドの主人と、それを殺す命令を受けているアンドロイドという発想もユニークです。また、ストーリー上でキャラの心情変化をしっかり描き、起承転結で読者を驚かせ、興味を引きつつ展開していく構成力も高いです。洋画のような会話のセンスと地の文も、独自の世界観を創れています。
前半のインタビュー形式の語りが、軽やかでとても読みやすく、一気にラストまで読み切れました。起こる事件の意外性にどきりとし、語り手が次に殺人を犯すにちがいないという流れまで、わくわくを積み重ねて、巧みに読み手を引き込んでいました。情報にも言葉にも無駄がなく、丁寧な推敲を感じさせられました。
翼=鳥=唐揚げからの連想で思いついたモチーフでしょうか。着想の意外性がおもしろく、わくわく読み進めました。夢の残骸を高温の油で揚げて食べるのも、すべてを賭けた青春を飲み込む意味で、「ただ食べる」よりずっとおもしろいです。
各部門でペンネーム五十音順
高校生のみなさま、多数のご応募ありがとうございました。
「【高校生限定】カクヨム甲子園2025【ナツガタリ】」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
選 評
「空ではなく海を望むハヤブサ」に仮託した、青年期の不安に満ちた自己探求の道程が、繊細に丁寧に描かれていました。ラストで羽ばたくハヤブサの前途を応援したくなる、力強い作品です。物語としての完成度の高さに加え、描写も鮮やかで美しく、大変お見事でした。