概要
二人の主人公が生きる、二つの世界のお話です。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!問いは一つずつ定義され、閾値を超えたとき、二つの物語は急速に集約する。
静か動かで言えば、この物語は「静」だ。
はっきりと目に映る大きな動きはほとんどない。
しかしながら全編を通してみれば、躍動している。
何が、と巧く言えないが、大きな何かが躍動している。
物語の大半は対話に占められる。
柔らかさを感じる文体は丁寧で端整で、物静かな佇まいだ。
その文体の雰囲気と、自主性のどこか希薄な主人公と裏腹に、
主題でもある思想と哲学は非常に饒舌で、読者を圧倒する。
一方の世界の主人公は休職中で、何をするでもない。
もう一方の世界の主人公は、反社会的組織の活動家。
初めは別々に語られる2つの世界は、終盤になって、
加速度的に集約され、1本の軸へと回帰していく。
ある少…続きを読む - ★★★ Excellent!!!社会で生き、社会で死ぬ
社会とは、なんだろうか。
社会不適合者、という言葉がいつか生まれた。そんな昔の話じゃなかった気がする。たぶん、つい最近の話。
その言葉は、決まって、自己を形容するときに使われる。
「おれは社会不適合者だからー…」
なんて調子で。
でもさ、社会ってなんだろう。
不適合だとして、社会がないと生きることってできないのかな。
いったい何の思念をひけらかしているのかと思われそうだが、まあ読んでみればいい。どう生き、どう死ぬか、なんてクソみたいな命題をけっこう考えちゃうようなタイプの人には、この物語はとびきり甘く、ズキンと心が痛んで、自分の不快音に耳を済ましてしまうんだ。ぜんぶ読…続きを読む - ★★★ Excellent!!!普段意識していないことを、改めて考えてみるきっかけとなる作品
結論から言うと、非常に面白い。
主人公ふたりと、ふたつの世界。それぞれで行われる対話を通して、主人公たちは自らの抱える悩みに対して答えを見出していくのにつられて、読んでる自分自身も、一緒になって自分自身の答えを探していた。
この作品で語られているテーマは、生き方の話だったり、在り方の話だったり、そういった抽象的で哲学的な話である。それは、ふとした拍子、例えば、休憩時間に煙草を吹かしてる時だったり、一日の終わりに湯船に浸かっている時だったり、そんな他愛もない時間に、浮かんでは消えていく益体もない思考に似通っていて、それでいて、作品内の登場人物たちの対話を通すことで、輪郭を与えられていく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!思考の余白を楽しむお話
結論として、とても面白かったです。
個人的な感想ですが、序盤を読み進めるのは難儀しました。彼らのお話が一体何を意味するか、ひいてはどのような意義を物語の中で持っているのかが解らない状況が続いてつまらなかった、とも言えます。頭の良さそうな(さして面識もない)人達が哲学的な事を喋っているのを聞かされている時の気分という奴です。(それはそれで、会話内容としては面白かったので悪くもありませんでしたが)
私の中でバラバラのルービックキューブが嵌ったのは第三章に入ってから。それまでがバラバラに見えたからこそ、嵌った時は非常に気持ち良く、後はそのままラストまで坂道を転がり落ちて行くだけです。
S…続きを読む - ★★★ Excellent!!!途中までは、とてもしんどい。
読み終えた結論だけを述べるなら、とても面白かったです。ただ、登場人物に感情移入して読み進めるタイプのわたしには、終盤になるまで、心が痛くてとてもしんどかったです。
わたしはAパートとBパートに分かれている構造の物語が苦手です。理由は、パートが替わる度に感情移入先を切り替える作業が必要になるからです。そのタイミングで我にかえって集中力が切れたり、感情の再構築が面倒になって読むのをやめたりしてしまいます。あと、片方のパートに気持ちを寄せすぎて、もう片方のパートを大事に出来なくなったりもします。
でも、この物語ではそんなことは起こらなくて、どちらも大事に読み進めることが出来ました。たぶん、プ…続きを読む