思考の余白を楽しむお話

 結論として、とても面白かったです。

 個人的な感想ですが、序盤を読み進めるのは難儀しました。彼らのお話が一体何を意味するか、ひいてはどのような意義を物語の中で持っているのかが解らない状況が続いてつまらなかった、とも言えます。頭の良さそうな(さして面識もない)人達が哲学的な事を喋っているのを聞かされている時の気分という奴です。(それはそれで、会話内容としては面白かったので悪くもありませんでしたが)
 私の中でバラバラのルービックキューブが嵌ったのは第三章に入ってから。それまでがバラバラに見えたからこそ、嵌った時は非常に気持ち良く、後はそのままラストまで坂道を転がり落ちて行くだけです。
 SFとしての発想については、お好きな方なら「あるある」となるものともう一つ、非常に筆者様の個性を感じさせるものが織り込まれていたのが印象的でした。登場人物の会話の中に充盈している思考や価値観、思想というのも然る事ですが、他者の培ってこられた物事の捉え方というものに触れられる愉しみを惜しげもなく詰め込んで下さったのだなと思うと自然とレビュー画面を開いていた次第です。

 また何か書き上げられる折があれば、その時はまたこうして目に触れる機会を頂ければ幸いです。

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