概要
未来の日本で、新しい紙幣『五万円札』が発行された。それは、国家の威信をかけ、最新技術を惜しげもなく投入した世界初のスマート紙幣。偽造防止のための専用チップを備え、サーバーに使用履歴を登録することが出来るという優れもの。ところがある日、この機能により、主人公の五万円札は、自分と同じ記番号の札が流通していることに気が付いてしまう。つまりそれは、自分の偽物が存在しているということ。大変です。これは何としてでも見つけ出さなければ――。
第2回HelveticaBooks短編小説賞にて、一次選考通過した作品を全面改訂。
テーマは「穴」でした。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!未来の最高額紙幣が主役!五万円札の一人称小説
未来の世界で流通するスマート紙幣「五万円札」が語り手となる、極めて斬新な設定の物語です。
主人公の五万円札は、高級寿司店の会計や裏路地の取引など、人間の経済活動の光と闇を見て回ります。
しかしある日、自分と全く同じ記番号を持つ「もう一枚の五万円札」が存在していることに気づくのです。
個体識別チップが埋めこまれ、どこでいつ使われたかの記録をサーバー上に残される世界初のスマート紙幣の偽物がどうして存在するのか?
五万円札は、自分の偽物を探し出そうとします。
この奇想天外なお札の一人旅が辿り着く驚きの結末を、ぜひご自身の目でお確かめください。 - ★★★ Excellent!!!お金に関する、おかしなおかしな冒険譚。
主人公はお金です。
それも五万円札です。
日本で流通している紙幣は、一千円、二千円、五千円、一万円ですので、
五万円紙幣は山本先生のオリジナルなのだと思います。
……最初、本当にあるのかと思っちゃった……。
とにかくこの五万円札。
金持ちが寿司屋の会計に使ったり、たまには闇取引に使われたりしながらもお札として、
文字通り経済を回しておりました。
そこに問題が発生します。
なんと自分と記番号が全く同じ紙幣が、出回っているらしいということです。
全く同じ記番号、それはすなわち、偽札を意味します。
主人公の五万円札は、独自に調査を開始します。それは、
偶然同席した五万円札の記番号を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「五万円札の導入」という奇想が織り成す新世界に刮目せよ。
めちゃくちゃ面白かったです!
「新紙幣『五万円札』が導入される」という設定からして読み手を引き込むのが上手すぎます。
それでいてこの奇想天外な前提が物語中で浮くことなく、地に足のついたリアル感を持っています。「五万円札」に説得力を持たせるための細やかな配慮が行き届いていました。
さらに本作の視点人物はまさかの「五万円札」本人。彼女の語り口がまた非常に軽妙で読ませます。落語を得意とされる山本様の良さが小説の文体でも遺憾なく発揮されていたと思います。
さらにさらに、読者に思考を求めてくる文学的側面も光っています。ここでは何をとは言いませんが、お札たちの会話の中で哲学的問いかけが生…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人間が作り出した「奇妙」なもの。その不思議に悩む紙幣たちの物語
本当に、お金って不思議なものだなあ、と改めて感じさせられます。
主人公は「五万円札」という、その世界での最高額に数えられる紙幣。
その紙幣が主人公となり、「お金」である自分の境遇を振り返るという形式で物語が進みます。
そんな五万円札にはきっちりと「型番」があるわけですが、なぜか彼(?)と同じ型番の紙幣があることがわかる。
つまり、偽札でも作られたか。それは自分の存在を脅かす良くないものに違いない。
そして、五万円札は改めて因縁の相手である「同じ型番の紙幣」と遭遇することに。
その後、作中で出てくる言葉が色々な「揺さぶり」を与えてくるのがまた面白かったです。
「生まれで…続きを読む