私は五万円札、価値とは何かを問う

私は、ただの紙幣――五万円札。
けれど、私は見てきた。
人々の喜び、欲望、過ち、そして祈りを。

現金の時代が過ぎ去り、キャッシュレスが日常になったこの国でも、
手に取れる「確かな価値」として、私はいまも流通している。

財布に入れられ、高級寿司店のカウンターを渡り、
時に新人の不器用な手でホッチキスを打たれ、
裏路地の闇取引にさえ立ち会った。
それでも私は、経済を支えることに誇りを抱いていた。

だがある日、私は「もう一人の私」と出会う。

同じ姿、同じ記番号、同じ魂を持つはずの紙幣が、
私にこう問うのだ――
「本物と偽物って、そんなに違うのかい?」

社会が定めた「価値」とは?
制度が定めた「正しさ」とは?
同じ記号を背負い、違う運命を歩んだ二枚の紙幣が、
対話を通して「存在」と「意味」の本質に迫っていく。

これは、「本物」と「偽物」の境界を越えた、
二枚の紙幣が見つめた「存在の意味」と「価値の本質」を巡る物語。

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