扉の中のトリニティ

作者 リエミ

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★★★ Excellent!!!

 超能力研究者は、彼女達3人の素質を、くみ取って、他の人がいない離島で
暮らしている。それは、彼女達の力の一つに、相手が思っている事を
読み取ってしまう能力があるからだ。
普通に考えても人は、他人と接するときに、あまり本音を言わない。
そのために、彼女達は幼い頃からの経験によって本音と表の部分の矛盾に
相当、苦労してきたのであろう。人間に対する考えや、社会の複雑性に
理解するには、まだ若すぎたかも知れない。
自分達もそうであれば、結果として彼女達と同じように自分達のテリトリーを、
失えば住む世界が無くなれば、世界を憐れんで見てしまうだろう、そして、
最善の道を選ぶだろう。この物語は彼女達を理解できるか?どうかと言った
ところで、また見方が変わってくると思いました。

★★★ Excellent!!!

「私たちが終わらせるんだから」

彼女たちはそう言った。
「滅ぼす」では無く、「終わらせる」と。


◇◆


短い話の中に、世界が凝縮されてました。

彼女たちは、諦めつつも希望を捨てるなと言った青年の言葉をどう受け止めたのでしょうか?

罪を犯さない人間などいない。
赤子ですら母の命を天秤に乗せて生まれてくる。
もちろん、それは彼女たちも同じ。
なのに何故共に生きることは難しいのだろう?


時が来た。
もう後戻りはできない。
解き放たれた彼女たちは翔けていく。

願わくば、「終わり」が「滅び」ではなく「始まり」であらんことを。

★★★ Excellent!!!

1つの部屋から始まる3人の物語、最後まで展開が読めずおもしろかったです。

三位一体でなければいけないのか、それが崩れた時にどうなるか? そしてそのラストは誰の手によって引き起こされたか……?

透明感のある場面描写、3人が紡ぐ優しくも儚い掛け合い。どれもここでしか読めない魅力があります。

★★★ Excellent!!!

優しい文体が醸し出す、ふわふわとした不安定な世界。
その世界に安定をもたらしている3人の少女。

3という数字は安定を意味するマジックナンバー。
鼎立という言葉もあるくらいに。

諸葛孔明は言った。
一国では腐敗する。
二国では対立する。
三国鼎立して、初めて世は安定する。

しかし、鼎立とは完全な安定を意味する言葉ではない。
その中に波乱や不穏さを内包している。
三竦みだからこその安定。

3人が3人でなくなったとき、三位一体が失われたとき、安定していた不安定な世界はどうなるのか。
その目で確かめていただきたい。
優しくも不安になる読後感が好印象の短編。


変化は常に外からやってくる。

★★ Very Good!!

不思議な絵本を読んでいるようでした。世界の行く末が語られるという意味では神話的でもあると思います。

ふわふわとした軽いタッチの描写が心地良い一方、世界が終わるかもしれない緊張感も同時に孕んでいます。

続編があっても面白そうです。
(でも世界はどうにかしていい方向に変わらないと大ピンチですね。)

Good!

 超能力は危険だ。
 これはもちろん、現実世界での価値観でもって「物理的に危ない」ということではなく、小説で題材として扱う際の危険性の話である。
 超能力に限らず、作品に人知を超えた存在を登場させる際はそれが作品にとって必要なのか吟味することが大事だ。でなければ、能力の強大さ故に、作品が転覆する恐れがある。
 この作品はどちらかと言うと、能力に押しつぶされかけているかもしれない。
 しかしながらこの作品では、世界の滅亡と超能力を題材としているにも関わらず、全体を通して優しい印象を持たせる言葉遣いや、情景描写が多い。
 心穏やかになりたいのなら、この作品を読んでみるといいかもしれない。
 執筆お疲れ様でした。