「世界の終わり」を描いた物悲しい傑作

部屋に三人の少女がいる。
少女たちはワンピースの色と同じシロ、クロ、アカという名前を持っている。

そこは孤島の家で、三人以外に老夫婦がいる。
三人は口を利かずテレパシーで会話する。
さらに三人はどうやら「世界を終わらせる」力を持っているようだが、それがどういうものなのかはわからない。

淡々とした静かな世界だが、常に緊張が張りつめている。
島の外から西宮という青年がやってくる。
「部外者」があらわれ物語は急展開を見せる。

シロが去り、能力を失ったアカはクロと言葉で会話する。
その会話は改行なしで描かれる。
ビートルズのジョンとポールのハーモニーのように、どっちが話しているのかわからなくなる混然一体となった会話で、このとき二人の、いや三人の魂は一つになった。

ラストは物悲しくも感動的だった。
少女終末旅行やファイアパンチのように、「世界の終わり」を描いた物語に共通する詩情を感じた。
こういうスケールの大きい悲劇は長編より短編のほうがインパクトがある。
終末ものがお好きな人に御一読をおすすめします。
傑作です。

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