主人公は十七歳の女剣士である。
名前はサリカで得物は中近東の片刃剣シャムシール。
砂漠がルーツの少女であろうか?
小説はサリカの一人称で語られる。
サリカの語り口は落ち着いていて聡明で、ダークな世界を切り開く光明を彼女の口跡に感じた。
死者の声に導かれ、サリカがたどり着いた廃墟の町は亡霊に満ちていた。
亡霊はかつて古代帝国の魔法使いに虐殺された、この町の住人の変わり果てた姿だった。
サリカは自分を導いた死者の声に応えるため、また亡霊を解放するため呪印を破壊しようとするが……
古代帝国の魔法使いの邪悪さは読んでいて憤りを覚えるほどだった。
ギルマンさんの筆致が圧倒的にリアルなせいでもある。
自分が思い出したのは十六世紀スペインの征服者が中南米で行った蛮行の数々を告発した『インディアスの破壊についての簡潔な報告』だった。
力あるものが無力なものを前にして紳士的に振る舞うことはほとんどない。
これは現代もそうだ。
サリカの剣がこの邪悪を斬り裂くのが爽快だった。
善と悪が力の限りを尽くして戦う物語である。
そのスケールは30000Wという文字数を超えている。
血と暴力にまみれた暗黒世界を断つサリカの手並に自分は拍手を送った。
ダークファンタジー+剣戟ものの快作です。
ぜひご一読をおすすめします。