「五万円札の導入」という奇想が織り成す新世界に刮目せよ。

 めちゃくちゃ面白かったです!

「新紙幣『五万円札』が導入される」という設定からして読み手を引き込むのが上手すぎます。

 それでいてこの奇想天外な前提が物語中で浮くことなく、地に足のついたリアル感を持っています。「五万円札」に説得力を持たせるための細やかな配慮が行き届いていました。

 さらに本作の視点人物はまさかの「五万円札」本人。彼女の語り口がまた非常に軽妙で読ませます。落語を得意とされる山本様の良さが小説の文体でも遺憾なく発揮されていたと思います。

 さらにさらに、読者に思考を求めてくる文学的側面も光っています。ここでは何をとは言いませんが、お札たちの会話の中で哲学的問いかけが生まれる展開は見事でした。

 真相も非常に納得感のある内容で素晴らしかったです。

 普段SFジャンルはあまり読まないのですが、本作を読んでその楽しさが存分に伝わってきました。

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