神父と女性が繰り出す懺悔室での会話。果たしてあなたは真相を見抜けるか?

 相も変わらず作品のクオリティーが群を抜いています。今回もよく練られたミステリ作品でした。

 舞台はイタリア。教会の神父として働く「僕」は懺悔室で一人の女性の罪の告白を受けることとなります。

 「僕」は彼女の相手をしながらも、何かに怯えているような様子。読者はこの明らかな「信頼できない語り手」に対してモヤモヤとした感覚を抱いたまま読み進めることとなります。

 女性の懺悔のほうは懺悔のほうで妙な長話となりますが、こちらも何やら隠し事をしたまま話しているような感じが漂っています。

 彼女の懺悔話にはイタリアの異国情緒を感じさせるようなリアリティーがあって、それだけでも十分に楽しむことができました。

 でも本作の醍醐味はそんなところではありません。ミステリ的真相がラストで明かされたとき、読者は間違いなく舌を巻くこととなるでしょう。

 この真相の提示も、ジワジワと少しずつ見えてくるような構成になっており、段々と体を蝕まれていくホラーのような感触がたまりませんでした。

 読者の期待にしっかりと応えつつ、さらにその期待を超えていく。非常に完成度の高い作品でした。