概要
毎日何もせず、ただベンチに座るだけ。そんな自分を変えられないし、変えようとも思わない──。
学校をサボり公園のベンチに通いつづけ、入学早々に留年したヘンな大学生、葛和田日鷹(くずわだひだか)。
そんな彼が出会った少女は<おかし>かった。
「わたしの名前はクッキー!旅人よ!相棒のリンゴちゃんと一緒にどこまでも、まだ見ぬ夢と冒険を求めて世界中を旅をしているのっ!」
超巨大なリュックサックを背中にぶるんと弾ませ、とんでもないおしゃべり癖をもった自称旅人の謎の少女、その名もクッキー(絶対に本名じゃない)。
彼女はベンチに座る俺を町の案内NPCだと誤認したり、この町を冒険しがいのあるダンジョンだなんて豪語したり……どうやら現実とファンタジーの区別がつかな
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!日常の風景が少しだけ魔法めくとき——旅が始まるのかもしれない。
ベンチに座ることしかできない大学生と“海を歩く”と言い張る謎の旅人クッキー。
現実とファンタジーの境界が揺れる、面白くて……少し切ない物語です。
舞台は幕張という実在の町。
見慣れた風景のはずなのに、クッキーがいるだけで世界が不思議な色合いを帯びていく。
彼女の無邪気さと危うさに主人公が振り回されていく中で、読んでいるこちらまで一緒にペースを乱されていくような感覚になります。
大げさな事件があるわけではないのに(ある意味クッキーのマシンガントークが事件なのか……?)、海の匂い、湿った風、夕焼けの照り返し……その景色を思うだけで、胸の奥がじんわりと切なくなるんですよね。
そして何より、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まばゆいのに目を離せない純粋
空虚な生活を送る主人公と、現実をファンタジーに置き換えたかのように生きる少女の交流を描いた、現代ドラマ作品です。
主人公はとあるできごとのせいで、無気力になってしまった大学生。
日がな一日をベンチに座って過ごし、ついには留年も確定してしまいます。
生活が追い詰められても、知り合いに叱咤されても動かない身体。
しかし、愛用のベンチに置かれていたある物を始点に、奇妙すぎる少女との交流が始まりました。
少女は言動全てが突飛。この世をファンタジーそのものであると知覚しているかのように、ハチャメチャで羞恥の欠片もない行動を繰り返します。
最初は隙を見て突き離そうとした主人公も、その引力に逆…続きを読む - ★★★ Excellent!!!どこへも行かない妖怪とどこかへ行きたい旅人が出遭った話
入学した大学へ行かず、公園のベンチに座って過ごし続ける青年、葛和田日鷹(くずわだ ひだか)。未来への不安を抱えつつもただ人生をやり過ごして――いくことにはならなかった。突然現れた不可思議な少女、自称旅人のクッキーと関わってしまったせいで。
“クズ”を自認した日鷹さんは「クズだからダメでいい」という、ある種の安寧を得た青年です。ガキ臭さを激烈に抉らせた人物像ですが、反感ではなく共感を覚えるのですよ。私自身、青春時代に正しい成功体験が積めずに抉らせたおじさんなので。そしてだからこそ、クッキーさんに苛立つわけです。彼女は常にパワフルで楽しそうで前向きで、どこかへ行きたくて必死です。どこへも行か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!冒険は日常の風景の中に潜んでいる
過去にとらわれたまま動き出すことのできない主人公が出会ったのは、おしゃべりでやたらとテンションの高い不思議な「旅人」。彼女にかかれば幕張の街が異世界のような冒険の舞台へと変わる。まるで街自体が生き物のように色々な表情を見せる。
対照的に見える二人が、ときに引きずられ、ときにぶつかりあう中で、お互いの足りない部分を補うかのように心を通わせていく。その過程が、ぶっきらぼうで壊れそうなほど繊細な言葉と、美しくうら寂しい情景とともに丁寧に描き出されている。
自分にとって大切な何かを発見することが冒険であるなら、それは日常の風景の中に潜んでいるのかも知れない。悩みながらも海を歩き出す旅人たちの背中をそ…続きを読む