日常の風景が少しだけ魔法めくとき——旅が始まるのかもしれない。
- ★★★ Excellent!!!
ベンチに座ることしかできない大学生と“海を歩く”と言い張る謎の旅人クッキー。
現実とファンタジーの境界が揺れる、面白くて……少し切ない物語です。
舞台は幕張という実在の町。
見慣れた風景のはずなのに、クッキーがいるだけで世界が不思議な色合いを帯びていく。
彼女の無邪気さと危うさに主人公が振り回されていく中で、読んでいるこちらまで一緒にペースを乱されていくような感覚になります。
大げさな事件があるわけではないのに(ある意味クッキーのマシンガントークが事件なのか……?)、海の匂い、湿った風、夕焼けの照り返し……その景色を思うだけで、胸の奥がじんわりと切なくなるんですよね。
そして何より、この二人がどんな結末へ向かうのかが気になってしかたない。
“歩き出せない青年”と“歩き続ける少女”の物語が、この先どこへたどり着くのか……続きを読むのが楽しみです。