幸せの形はひとつじゃない。そこに向かう心地良い描写を堪能しよう。

  • ★★★ Excellent!!!

愛する二人に訪れた、あまりにも悲惨な出来事。
受け入れがたい現実に途方に暮れる彼女。
そんな中、不意に登場するシュテルン・マッヘン。偶然とは思えない、不思議なアイテムとの出合いにより彼女の物語は動き出します。

ストーリー自体は単純でわかりやすく、ラストはハッピーエンドに向かっているのが予想できますが、注目すべきは、そこに至る過程の抒情的な描写です。心に染み入るような描写が丁寧に描かれていて、ボクなんか最初から彼女に感情移入してしまい、物語の一部と化してしまいました(笑)

冒頭に衝撃は走るものの派手なアクションや演出はなく、フラットな物語が淡々と進むのですが、それでいて読者を飽きさせないのが作者の技量だと思います。それで3万字もたせるって、ある意味スゴイと思います。誤魔化しが効かない中、しっかり文章が紡がれてる証拠です。

ラストは賛否両論あるかもしれませんが、幸せの形はひとつではなく、そこに至る過程も千差万別です。個人的には、この小説は「過程を味わうもの」だと思いました。読んでいると、文章の持つリズムと期待感で心地良い気分にさせてくれます。

女性はもちろん、男性にもぜひ読んで欲しい秀作です。

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