魔王と婚姻させられるみたいです

若菜は目を覚まし、何かを探すように辺りを見渡し、誰もいない事を確認すると、布団に潜り泣きはじめてしまった


「...うっ...ぐすっ...痛い...帰りたいよ...」


ユーがいる時は泣いたら負けだと思ってずっと耐えている、だが1人の時はひたすら泣く...いや泣く事しか出来ないのだ、若菜がいる部屋はベットと机、それしかない、本も無ければ、テレビもない殺風景な部屋で窓はカーテンで閉められている、そして部屋には若菜のすすり泣く声と鎖がじゃらじゃらとなる音が虚しくこだまする。


「...なんで...わたしなの...もうやだ...帰りたい」


すると足音が聞こえ、若菜は顔を拭い泣き止み、震える体をなんとか抑える。


「若菜様、おはようございます!」

「お...おはよう」

「あら、今日は起きてたんですね...躾が効いているようで嬉しいです!」


ユーがご飯が乗せてあるトレーを机に置くと、ご飯を食べさせる


「はい、あーんです♪」

「あ、あーん」

「美味しいですか?」

「う...うん、美味しい」


最初は吐きそうになったがなんとか耐えて運ばれたご飯をもぐもぐと食べる、だが今の若菜は味なんてこれっぽっちも感じない、毎度毎度吐きそうになるが無理やり飲み込んで食べている。


「ねえ...自分で...食べれるよ...」

「あっ!熱かったですか?なら少し冷ましますね、ふーふーしてあげますからね♪」


これは聞いてくれなさそうと、諦め大人しく食べさせられる事にした。


「...ごちそうさまでした...」

「お粗末さまでした...じゃあ私もいただきますね〜」


有無聞かさず、押し倒し血を吸い始めた。

若菜にとってはベットの天蓋を見つめる事などもう慣れっこだ。


「ふぅ〜、ご馳走様でした、それじゃあ若菜様行ってきますね!」

「...いってらっしゃい...」


ユーがキスをして足早に出ていくと、若菜は緊張の糸が切れ、ベッドに横たわり自身に巻かれた包帯の上に乱暴に巻かれている鎖を引っ張っては取れないか試してはみるが取れる気配はない。


「...眠い」


若菜にとってこの時間ですら休めない、ユーが帰って来た時起きていなければならないから、もし寝ていた場合また恐ろしい躾が待っているからだ。


「...少しだけなら大丈夫...かな...」


少しだけと自分に言い聞かせ目を瞑ろうとすると、パリーン!と窓が割れる音がして眠気が吹き飛んび、窓の方を見ると角を生やしたピンク髪の女の子が立っていた。


「な、なに!?」

「やっっっと見つけた!!!」


困惑している若菜の元へ歩いてくる


「ん?なんじゃこれは...ふんっ!」


手足に繋がれている鎖を全て引きちぎった。


「よし!これでお主を縛るものはなくなったぞ!さあ行くぞ!!」

「えっ!?」


若菜はわけもわからず抱き抱えられ、外に出ると涙がこぼれ落ちてきた、久々の太陽に外の空気を感じたからだ。


「どうした、なぜ泣いておる?」

「い、いや...その...」

「ああ!そうか!余の花嫁になれる事が嬉しいんじゃな!!」

「...え?」


違うと言うつもりだったが、「余も嬉しいぞ!」と言われ持ち上げられる。


「ふふっ、帰ったら早速式を挙げるとするかの!」


すると、顔をぐいーっと近づけられまじまじと見られ若菜は目を逸らそうとしたが何故か逸らす事が出来ず、目を見つめていると若菜は意識失なった。


「目の隈が酷すぎるな...これは暫く寝かせといた方が良さそうじゃな」


そう嘆いて少女は若菜を抱え目的地に飛んでいった、ユーが部屋に戻る頃には若菜の姿はなく割れた窓とその破片だけがその場に残った。


「これは...ルルーナさんの仕業ですね...よくも私の若菜さんを...待っててくださいね...」


♦︎ ♢ ♦︎


若菜は誰かの鼻息が当たるむず痒さで目が覚めた。


「ん...くすぐったい...痛!?」

「〜zzz」


寝ている少女の力が強いのか腕が今にも折れそうでなんとか抜け出す事が出来た。


「...ここどこ?」


ユーの所の部屋とは打って変わって、ぬいぐるみが沢山あるファンシーな部屋だ。

若菜はベットから降り、力が入らない足でなんとか歩いて部屋の外に出ると廊下は薄暗く外は真っ暗だった。


「...さむ」


元いた部屋から毛布に包まりながら暗闇のため壁に手をつきながら歩いていると、部屋が開き突然引き摺り込まれ拘束され視界と口を何かに塞がれた。


「おぉ〜本当に人間だ...もしかして魔王様が言ってた人かな?....うーん、ちょっとだけ味見しても大丈夫かな...うん!味見しよ!どうせバレないし終わったら部屋にこっそり戻せばいいよね!」

「何がバレないんじゃ?」

「何って味見だよー、20本もあるんだよ?1本ぐらい食べったってバレや...し...ない...よ...ま...ままま魔王様!?」

「ふん!!」


ごちん!と音がすると抱き抱えられ部屋を移動すると拘束を解かれ椅子に座らさせ目隠しと優しく取ってくれる。


「すまんな、余の部下が...だが若菜も悪いぞ?何も聞かずに外に出るとは、魔族にとって人間は高級食品なんじゃ」

「...じゃ、じゃあ君も私を食べるって事?」

「馬鹿を言うでない、余は人間など食べんわ、それと君ではない余はルルーナ・ナーゴ・フォルニードだ、ルルで良いぞ」


すると首元からカチャンと音がした。


「な、なに...首輪?」

「ふむ、似合っておるの...よいか、若菜はこれから余と結婚するんじゃから他の者に目移りするでないぞ?」


若菜は涙が出てきた、その涙が嬉しさからか恐怖からかどっちの涙かは明白だ


「そうかそうか、泣くほど嬉しいか...若菜は子供は何人欲しいのじゃ?やっぱり沢山の子供に囲まれたいか?」

「....ぐすっ」

「ああ、後浮気は許さんからな」

「...もうやだ」


もう身も心もボロボロだ、涙が止まらない。


「...お母さん...遥...誰でもいいから...助けて...」


ぼそっと誰かに助けを求めると首輪を勢いよく引っ張られ体を床に叩きつけられた。


「言ったそばからいきなりの浮気宣言か?よいか?若菜は余と結婚するんじゃぞ!他の者の名前など出すでない!!」

「...ご、ごめんなさい」


痛みを我慢しながらなんとか謝ったがルルは気が治ってない様子だ。


「1度目は許してやろう、だが2度と余以外の者の名前を出した時は...そいつをお前の目の前で殺してやるからの...精々気をつけるんじゃな...わかったか?」


恐怖で言葉に詰まったが首を縦に振るとわかってくれたのか押さえつけている手を離すと、抱えてベットに押し倒した。


「結婚前に手を出すつもりはなかったが...仕方ない...優しくはできんかもな」

「...まって!」


その日、この部屋には喘ぎ声だけが響いた。

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