魔族の好物は人間らしいです

「...ん、いたっ...」


痛みで目が覚め辺りを見渡すともうルルはおらずいない事を、確認するとベットにまた体を預け、天井を眺め自身の左手の薬指に付けられている指輪をみているとお腹が鳴り、机に置いてある食事を見ると深くため息を吐き、空腹を誤魔化すかのよう目を閉じ再び寝ようとするが覚悟を決めて食事をする。


「...やっぱりまずい...美味しくない」


ここに出される食事はとてもではないが人が食べれるようなモノではなく、不味いし苦い、が当たり前で若菜は食べたくはないのだが残すとルルが無理やり口に放り込んで来るためゆっくりと口に運んでいく、しばらくすると完食はするが吐き気がしたがなんとか我慢し、水を飲み吐き気を抑えた。


「...吐いたらまた殴られる...耐えなきゃ...慣れなきゃ...」


ぶつぶつと嘆く若菜の顔や腕にはガーゼや包帯が乱雑に巻かれており所々に血が滲んでいる。


「...今日は大丈夫だよね...大丈夫...なにもしてないから大丈夫なはず...だいじょうぶ...だいじょうぶ...」


ぶつぶつ言いながら震える体を両手で抑え体を丸くさせ隠れるように布団を被り目を瞑る。

ここでは若菜は手錠や足枷はつけられていない、ルルからすればどうせこの部屋から出られないと思っている、外には自分を狙っている魔族が沢山いて捕まれば最後、死よりも恐ろしい事が待っているのを身をもって経験しているからだ。


「若菜よ、起きとるか?」

「...!...お、おはよう...ございます...」

「そんなかしこまらなくてよい、お主は余の妻なのだからな!」


ユーからあのような事をされていたからか、体が嫌でも反応してしまう。


「うむ、今日はしっかりと食べておるな、1人で食べれてえらいぞ!」


ルルはまるで小さい子を宥めるかのように抱きしめて撫でてきたが、力が強いのか若菜の体はミシミシと悲鳴をあげる。


「いっ、痛いッ!」

「す、すまん!力加減がまだわからなくての...人間は相変わらず貧弱じゃな...」


そう嘆いていると部屋の扉がノックされた、まだ仕事中だったのかルルは若菜にキスをして部屋を後にした。


「...はぁ〜」


ルルが部屋から出たのを確認すると再びベットに横になろうとすると何かで口を塞がれ、抵抗するものの全く動かない。


「シッ!そのまま聞いて?暴れないでね?」


若菜は抵抗出来ないと知ると、恐る恐るコクリと頷く。


「ここから帰りたいでしょ、若菜ちゃん?」


この質問にもコクリと頷く。


「あたしの言う事聞いてくれるなら、ここから出してあげる...いい、離すからね、騒がないでよ?」

「...今の話ってほんと?」

「うん、本当だよ!...あ、あたしの事はライアって呼んでね?」


そう名乗った少女、ライアは若菜の手を取り部屋を出ようとする。


「あっ、そうだこれ被っといてね?」


一回り以上大きい上着を被せるとフードで隠した。


「あたし達魔族って鼻が効くからさ、あとここ寒いし、流石にシャツ一枚じゃ寒いでしょ、だからそれ着といてね」

「あ...ありがと」

「よしっ!じゃあ行こう!」


部屋を出て数分も立たない内に若菜は疲れたため、今はライアに抱えられ運ばれている。


「ご、ごめん、手間取らせちゃって」

「いいよ、いいよ!毎日ベットの上だったんでしょ?そりゃあ仕方ないよ!」


目的地の場所に着くと若菜は下ろしてもらい扉を開けた...そこには血だらけの麻袋が沢山吊るされていた。


「...え」


脳が追いついておらず言葉がでなくなっていると何かに視線を奪われ若菜は気を失った。


♦︎ ♢ ♦︎


バシャっと水をかけられ余りの寒さと謎の浮遊感があり目を覚ますとそこにはバケツを持ったライアが逆さまで立っていた。


「あ、起きた?」

「こ、ここって?」


辺りを見渡すと足は縄で縛られておりその足を上にして吊るされていて、首を上に向けるとそこにはドラム缶いっぱいの水が溜まっていた。


「な、なに、どうなってるの?」

「今から若菜ちゃんですこーしだけ遊ぶんだよ?」

「....え?あそぶってなっ!?」


何で、と聞こうとすると突如水が溜まっているドラム缶に沈められた、少しすると吊るしている縄が上に引っ張られ、ずぶ濡れの若菜が咳き込みながら戻られされた。


「ゴホッ!ゴホッ!...ハァ...ハァ」

「ありゃ、たくさん水飲んじゃった?そこら辺は気を遣って比較的綺麗な水にしてるから大丈夫だと思うけど」

「...どゔびで...にがじで...くれるって...」


ライアは再び若菜を沈めまた戻した。


「あたしのこの声に聞き覚えない?」

「...ハァ...ハァ...も...もうやめ...」


質問に答える暇もなくまた沈められ、そこから何回も繰り返され気絶してしまう。


「やっぱりあんな事になっていると警戒心が無くなるんだねぇ〜、人間って面白いよ...おーい起きて起きて」


ペシペシと叩いて気を失った若菜を無理やり起こす、ポロポロと泣き始める。


「えぇー、嘘ぉ!?起きたと思ったら今度は泣くの?わっかんないなぁ」

「...たすけて...かえりたいよ...」

「...つまんな」


ライアは飽きたのか吊るされている縄を切ると頭をぶつけて痛がっている若菜を引きずって分厚い扉を開け真っ暗な部屋の中に放り込んだ。


「あたし眠くなっちゃたから今日は寝るね、続きはまた明日、生きてたらまた明日も遊んであげる、死んでたら...その時はあたしが食べてあげるね」


バタンと閉められ、真っ暗な部屋に縛られたまま取り残された。


「...もうやだ...さむい...いたい...らくに...なりたい...だれか...たすけ...て.........ひっく........」


何も見えない真っ暗な部屋に泣く声が響いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る