魔王と吸血姫と修羅場

何かに包まれている暖かさで若菜は目を覚ますと、そこは見慣れていたルルの寝室だった。

あれは夢だったのかと思ったが頭に痛みが走り夢ではない事がわかった、何が何だかわからず混乱していると扉が勢いよく開かれた。


「若菜!」


ルルは勢いそのままに若菜に抱きついた。


「よかったぞ!お主が死んでおったら余はいきなり未亡人になるとこじゃった」

「あ...あの...なんで私ここに...」

「最愛の妻を助けるのはあたりまえじゃろ?」


理由になってなかったが、そんな事より助かった事への安心感が勝ってなにも気にならなかった。


「...ありがと、ルル」


今まで1度も抱きしめ返した事がなかった若菜が初めてルルを抱きしめるとルルは戸惑ったが段々と嬉しくなってきたのか満面の笑みで力加減をしながら抱きしめ返した。


「...!うむ!...で、ではもう一度言わせてくれ、余と結婚してくれぬか?」

「...はい」


若菜は差し出されたルルの手を取った。


「よいのか!?」

「...うん」 

「つ、ついにっ...若菜が余と結婚してくれるぞーーーー!!!」


抱きしめてぐるぐると出会った時のように回すと降し抱きついた。


「2人で幸せな家庭を作るんじゃぞ!」

「...うん、頑張ろう?」


若菜から見えないルルの顔は邪悪な笑顔で溢れていた。


「そうじゃ、式を挙げる事にしよう、若菜と余の2人の式になると思うがの...少し待っておれ!」


慌ただしく部屋から出ていくと、若菜は再びベットの上に寝転がる。


「...これで...いいよね」


若菜はそう自分に言い聞かせ目を瞑った。

一方ルルの方はというと...


「ふふふ、計画通りじゃ!ライアよよくやった!」

「ありがとうございます」


ライアはルルに賛辞を貰うと役目を終えたのか下がっていった。


「まさか、こうも上手くいくと...」


そう、ライアが若菜に行っていた拷問は全て最初からルルが計画していたのだ。


「どれ、これからは急がしくなるな」


腰をあげ、再び若菜がいる部屋へ向かう途中何かが響き城が揺れ始める。


「い、今のは...まさか!」


ルルは若菜のいる部屋へ駆けていった。

そして話は数分前に遡る、ベットが揺れる感覚で若菜は目を覚ますと、思わず叫びそうになったが、四肢を拘束され物を口にねじ込まれ塞がれた。


「やっと見つけましたよ、若菜様」


久しぶりの再開したユーは荒い息遣いをしていたが自分の昂りを抑えると若菜の首筋に噛みちぎる勢いで噛みついた、あまりの痛さに叫ぶが口を塞がれているせいで苦しそうだ。


「んー!!んー!!」


足をガシガシと動かそうとするが拘束している鎖はビクともせず段々と擦れて血が滲んできていた。


「助けに来たんですから、このぐらいは良いですよね?...聞いてます?気絶しないで聞いてくださいね?」


意識が遠のく中、無理やり顔を両手で掴まれユーと顔を合わせるれる。


「色々と言いたい事はありますけど、それは私たちの愛の巣に帰ってからにしましょうか、躾...楽しみですね」


逃げようにも体が動かず、意識が朦朧としてきた。


「結構吸っちゃいましたからね、まあ抵抗されないので楽ですが」


あたり一面をぶっ壊すぐらいの魔法を放ち、穴を開けると若菜を担ぎこの場から去ろうとするとドアがバン!!と開かれた。


「若菜!!」

「あら、お久しぶりですねルルーナさん」

「吸血姫風情が何をしておる」


そこにはいつものようなルルはいなく、ドスの効いた声でユーに迫る。


「初めに若菜様に目をつけたのは私ですよ?それを奪われたから奪い返したまでです」

「若菜は余の嫁になってくれるのじゃ、今すぐそこに置いて失せろ、そうすれば命までは取らん」

「あなた如き負ける私じゃありませんよ?」


ユーは狼を召喚すると若菜を担がせ走らせた。


「さ、これで若菜様に危害が行く事はないですね...ここで殺してあげますよルルーナさん?」

「ぬかせ、貴様如きに負ける余ではないわ」


2人はぶつかりあい、魔王城が半壊するほどの戦いが繰り広げられた。

そして、ユーの召喚した狼はいつの間に消滅して若菜は森の中で倒れていた、それに近づく一つの影があった。

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