第23話 義昭を迎える道 ―信長の決意と藤吉郎の成長

1565年、室町幕府13代将軍・足利義輝が三好三人衆に討たれ、乱世の混乱がさらに激化した。その弟・足利義昭は各地を転々とし、最終的に織田信長を頼ることになる。信長にとって義昭を京都に迎え、将軍に据えることは、幕府の権威を利用して自らの勢力をさらに強固なものにするための重要な戦略だった。


「藤吉郎、これからが本当の戦いだ。」


岐阜城の天守から、美濃の山々を見渡しながら信長が静かに言った。彼の眼差しには、天下統一への強い決意が宿っていた。足利義昭を京都に迎え、彼を将軍に据えることで、信長は表向きは「将軍を支える武将」として、裏では実質的な支配者として力を蓄えようとしていた。


「義昭様を無事に京都に送り届けることができれば、信長様の力は揺るぎないものとなります。私はそのために命を懸けて戦います!」


藤吉郎は胸に決意を抱き、信長に頭を下げた。これまで小者として仕え、数々の戦で武功を挙げてきたが、これからはその能力を更に試される大きな局面に直面しているのを感じていた。


藤吉郎が率いる部隊は、足利義昭を護衛し、京都へと進軍を開始した。三好三人衆をはじめ、反信長勢力が義昭の将軍就任を阻止しようと動き出していた。藤吉郎は慎重に進軍しながらも、いつ襲撃が来てもおかしくない状況に心の中で緊張を感じていた。


「ここでの戦いが決まれば、信長様の野望も現実のものとなる。俺がこの手で、その道を切り開く!」


藤吉郎はその思いを胸に、義昭の護衛に万全を期した。


夜明け前、進軍途中の藤吉郎の部隊に、突如として矢が飛び交った。森の中に潜んでいた三好三人衆の一派が、義昭の行く手を阻むべく伏兵を仕掛けていたのだ。緊張が一気に戦場を包み込み、兵たちは一斉に防御の態勢を取った。


「伏兵だ! 義昭様を守れ! 敵を見つけ次第、一斉に反撃せよ!」


藤吉郎は素早く指示を飛ばし、自らも敵陣へ向かって刀を抜いた。


戦場は一瞬にして激戦の様相を呈した。矢が飛び交い、槍と刀がぶつかり合う音が響き渡る中、藤吉郎は自ら先頭に立ち、敵を切り裂いていった。彼の刀が光るたびに、敵兵は次々と倒れ、戦場での藤吉郎の力強さと決断力が明確に示されていた。


戦闘が続く中、藤吉郎はふと、これまでの自分の道を思い返した。農民の出であった自分が、こうして信長のために戦い、義昭という歴史に名を残す存在を守る立場にいる。その重責が胸にのしかかる一方で、信長への強い忠誠心と野心が、彼の心に火を灯していた。


「俺が信長様に認められるためには、ここでの戦いが大事だ。名を挙げ、さらに強くなる!」


彼の胸には、ただ戦いに勝つだけではなく、信長にとって欠かせない存在となるという大きな目標があった。


突然、藤吉郎の前に一人の敵将が立ちはだかった。三好三人衆の一派に属する猛将で、その目には義昭を討とうとする執念が見て取れた。藤吉郎はその鋭い眼差しを感じ取り、静かに刀を構えた。


その男は身の丈六尺を超える巨漢、三好長逸。三好三人衆の一角を担う猛将として知られ、その両手に構えられた長大な槍は、まるで蛇のように不気味な曲線を描いていた。巨体から放たれる威圧感は尋常ではなく、彼の姿だけで戦場の空気が一瞬止まったかのように感じられた。


「お前が織田の家来か?」


長逸が口を開き、低く重々しい声が響いた。その声音には、敵に対する軽蔑と戦場での無数の殺し合いを乗り越えてきた自信が滲んでいた。


「お前が三好長逸か……。」


藤吉郎は相手の圧倒的な体格と威圧感を前に、一瞬の緊張を感じながらも、剣の柄を強く握りしめた。義昭を無事に送り届けるという使命と、信長に忠誠を誓った自分の信念が、彼の内なる不安を打ち消していった。


「その通りだ。だが、お前の進軍はここで終わりだ。俺の槍でな。」


長逸の口角が僅かに上がり、不敵な笑みを浮かべた。その直後、槍が風を切る音と共に藤吉郎に襲いかかった。槍の長さ、重さ、そして猛将の持つ体力が生み出すその一撃は、まるで岩を砕くかのような破壊力だった。


藤吉郎はその一撃をかろうじてかわしながらも、地面に突き刺さった槍が作り出した溝を見て、敵の力量を痛感した。


「こんな力……まともに受けたらひとたまりもない……!」


瞬時に判断を下し、藤吉郎は敵の槍の間合いに入ることを決意した。距離を詰めることで、長逸の槍の優位性を削ぐしかない。だが、それは自らが危険な領域に飛び込むことを意味していた。


次の瞬間、長逸は藤吉郎の意図を察知し、槍を横に薙ぎ払った。その一撃は、藤吉郎の頬をかすめ、森の木々を薙ぎ倒していく。藤吉郎は体を低くしながら、一気に前に詰め寄った。だが、長逸は冷静に槍を引き戻し、再び藤吉郎を狙い撃った。


「くそっ……!」


槍の勢いを利用して、藤吉郎は斜めに跳び、攻撃を回避した。彼の動きは俊敏で、間合いを詰める一瞬のチャンスを狙っていた。しかし、長逸は隙を見せることなく、次々と攻撃を繰り出してくる。まるで嵐のような連撃に、藤吉郎は徐々に追い込まれつつあった。


藤吉郎は猛攻をしのぎながら、長逸の動きに徐々にパターンがあることを見抜いた。槍の軌道、攻撃のタイミング、そしてわずかに体が崩れる瞬間。それを見極めることで、反撃の糸口が見えてきた。


長逸は、再び槍を大きく振りかざし、上から藤吉郎を狙った。その瞬間、藤吉郎は地面に低く身を伏せ、槍の軌道をかわす。そして、槍が地面に激突し、長逸が体勢を崩したその瞬間を見逃さなかった。


「今だ!」


藤吉郎はその瞬間、全力で距離を詰め、一気に長逸の懐に飛び込んだ。槍が使えない至近距離に持ち込むことで、藤吉郎は自分の得意な剣術に持ち込むことに成功した。


長逸はすぐに槍を捨て、腰に差していた短剣を抜いた。巨漢の猛将が短剣を握り、藤吉郎に襲いかかってきた。しかし、藤吉郎はその勢いを巧みに利用し、相手の動きを誘導する。


長逸の短剣が鋭く振り下ろされるが、その攻撃をわずかにかわし、藤吉郎は体を回転させながら反撃の一太刀を繰り出した。


「これで終わりだ……!」


藤吉郎の刀が、長逸の鎧の隙間を正確に捉え、深々と斬り込んだ。長逸の体が一瞬硬直し、彼の目が大きく見開かれる。そして、そのまま地面に崩れ落ちた。


「信長様の命を阻む者は、この藤吉郎が許さぬ……!」


藤吉郎はそう言い放ち、刀を鞘に納めた。戦場の喧騒の中で、彼の静かな勝利の余韻が広がった。


猛将・三好長逸を打ち倒した藤吉郎は、ふと空を見上げた。戦場の混乱の中でも、彼の心には一瞬の静寂が訪れた。信長のため、義昭のため、この勝利が次の一歩に繋がることを感じながらも、彼の心にはさらなる決意が宿った。


「まだ終わりではない。これからも俺は……信長様のために戦い続ける。」


敵を退けた後、藤吉郎は兵たちと共に義昭を無事に護送し続けた。戦闘が終わったとはいえ、心の中では常に次の戦いに備えていた。


その夜、藤吉郎は静かに星空を見上げながら、信長とのこれまでの歩みを思い返した。


「信長様……俺がここまで来られたのは、あなたのおかげです。俺は、もっともっと強くなります。信長様と共に、天下を取るその日まで……。」


彼の心は熱く燃え、次の戦いへの準備が整っていた。


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次回の選択肢


1.藤吉郎は、さらに次の戦場で信長のために武功を立てるため、進軍を続けることを決意する。

•藤吉郎は、信長の命令を受けてさらなる戦場に向かい、武功を挙げる道を選ぶ。彼の決意が再び試される。


2.藤吉郎は、京都で義昭の将軍復帰を支えるため、内政や幕府の再建に向けた役割を果たす。

•戦場ではなく、幕府の支え手として政治の場で活動する。信長の側近として幕府の再建を目指す新たな展開。


応援コメントでの投票のお願い


読者の皆さん、次なる藤吉郎の選択を決めるのはあなたです!

明日朝7時までに応援コメントで選択番号を記載してください。彼がさらに戦場で武功を挙げるのか、それとも内政に力を注ぐのか――あなたの選択が藤吉郎の未来を決めます!


次のシーンは、翌日17時に投稿されます。藤吉郎のさらなる挑戦をお楽しみに!


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