第16話 武人としての誇りと新たな盟友

織田軍はついに、稲葉山城の前にその大軍を構えていた。斎藤家の牙城であるこの城を落とすことができれば、美濃の支配はほぼ織田信長の手中に収まる。しかし、この戦いは容易ではない。城を囲む山岳地帯は険しく、自然の地形を利用した防衛線が織田軍の進行を阻んでいた。信長自身も、慎重な戦略を求めていた。


だが、その中で藤吉郎は一つの大きな決意を固めていた。今回の戦いで、ただ戦略に頼るのではなく、自ら先頭に立って稲葉山城を攻める。それこそが武人としての誇りを示す最も重要な瞬間だと彼は感じていた。信長の期待に応えるためには、戦場で名を上げ、己の存在感を確立する必要があった。


「これが俺の時だ。」


藤吉郎は心の中でそう呟きながら、鎧を身に纏い、武器を手に取った。信長の軍の先陣を切る役割を任された彼は、柴田勝家や他の武将たちの注目を浴びていた。かつて農民出の小姓あがりとして軽んじられていた彼が、今や織田軍の先鋒を務める立場にあることに、彼自身も感慨深い思いを抱いていた。


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藤吉郎の部隊は、朝霧が山を覆う中、稲葉山城の前線に進軍した。斎藤軍は山の中腹に布陣しており、その守りは堅かった。山の険しい地形を利用し、織田軍の進軍を阻むために罠や伏兵を配置していた。しかし、藤吉郎はそれを恐れることなく、前進を続けた。


「俺に続け!」


藤吉郎は自ら先頭に立ち、兵士たちを鼓舞した。彼の決意は揺るぎないものだった。斎藤軍の矢が次々と飛んできたが、藤吉郎は冷静にそれをかわし、前進を止めなかった。彼の勇敢な姿は部下たちに大きな士気を与え、兵士たちは次々と続いた。


やがて、斎藤軍の伏兵が姿を現し、激しい戦闘が始まった。山道の狭い場所での戦いは激烈を極めた。斎藤軍の兵士たちは必死に守りを固め、織田軍を押し返そうとしていた。だが、藤吉郎はそこで怯むことなく、敵陣へと切り込んでいった。


「この一戦で、俺の名を轟かせる!」


藤吉郎は叫び、刀を抜いて敵兵を次々に討ち倒していった。彼の素早い動きと冷静な判断力は、敵に恐怖を与えた。斎藤軍は一瞬のうちに混乱に陥り、前線が崩れ始めた。


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この戦の最中、一人の若き武将が目に留まった。彼は斎藤軍ではなく、どうやら他の勢力の兵でありながら、斎藤家に雇われているようだった。その武将は藤吉郎が敵陣を切り崩していくのを見つめ、静かに微笑んでいた。


戦いが一段落した後、その武将が藤吉郎に近づいてきた。


「見事な戦いぶりだ、藤吉郎殿。」


その声に振り返ると、若きながらも知性を感じさせる鋭い眼差しの男が立っていた。


「あなたは……?」


「私は竹中半兵衛と申す。稲葉山城の主君である斎藤家に仕えながらも、今は織田軍の動きを観察させていただいておる。まさか、これほどまでに勇敢な武将にお目にかかるとは思わなかった。」


竹中半兵衛――その名は藤吉郎も耳にしていた。美濃を代表する名将であり、策略に長けた若き天才と称されている。藤吉郎は半兵衛の評価を聞き、驚きと共に畏敬の念を抱いた。


「竹中半兵衛殿か……こちらこそ、名高き武将にお褒めいただけるとは光栄の至りです。」


藤吉郎は礼を述べたが、半兵衛は謙虚な様子で首を振った。


「私は策を練るのは得意だが、実際に戦場で武功を挙げることは不得手だ。藤吉郎殿のように自ら剣を振るい、先陣を切って戦う姿は、私にはまねできぬものだ。」


半兵衛の言葉に藤吉郎は少し驚いたが、同時に親しみを感じた。武人と戦略家、それぞれの道を歩む者が、互いの長所を認め合う瞬間だった。


「では、私が剣を振るい、半兵衛殿が策を練る――共に織田軍の勝利に貢献することができるかもしれませんな。」


藤吉郎が冗談交じりにそう言うと、半兵衛はにこやかに笑った。


「まさにその通りですな。いずれ、織田家の未来のため、我ら二人が力を合わせる時が来るかもしれません。藤吉郎殿、私はあなたと共に戦う日が楽しみです。」


二人の間には、戦場を超えた深い信頼感が芽生え始めていた。それぞれ異なる立場にありながらも、互いを認め合う存在として意気投合したのだ。


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やがて、戦は次の局面に進もうとしていた。稲葉山城への総攻撃の準備が整い、織田軍全体が次なる戦いへと動き出す。藤吉郎と竹中半兵衛の盟友関係は、これからの織田軍にとって重要な力となるだろう。


柴田勝家が藤吉郎の元に駆け寄り、勝利の報告を聞いて満足げに言った。


「よくやった、藤吉郎。これで稲葉山城への道が開かれた。お前の働き、信長様にも報告させてもらうぞ。」


藤吉郎は頭を下げ、勝家の言葉に応えたが、その目はまだ前方の稲葉山城を見据えていた。


「ありがとうございます。しかし、まだ終わってはおりません。稲葉山城を落とすまでが我らの役目。次も、必ず先頭に立たせていただきます。」


竹中半兵衛もまた、藤吉郎の横に立ち、戦場を見つめていた。


「これからの戦い、共に乗り越えましょう。信長公のために。」


藤吉郎と半兵衛の絆が、稲葉山城攻めをさらに強固にするものとなる。戦場に響く兵たちの声が、次なる大戦を予感させていた。


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次回の選択肢


1. 藤吉郎と竹中半兵衛は力を合わせて稲葉山城攻めの中心となり、武功を挙げる。

- 二人は戦場でそれぞれの力を発揮し、藤吉郎は武人として、半兵衛は策士として織田軍の勝利に大きく貢献する。


2. 藤吉郎は自ら先頭に立ち、稲葉山城の陥落を目指すが、半兵衛の助言に従い、奇襲作戦を敢行する。

- 藤吉郎は武人としての名をさらに轟かせるため、半兵衛の策を取り入れつつ、自ら先陣を切る道を選ぶ。策略と武力が交錯する戦いが始まる。


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応援コメントでの投票のお願い


読者の皆さん、藤吉郎と竹中半兵衛の運命はこれからどう動くのか、皆さんの選択にかかっています!

明日朝7時までに応援コメントで選択番号を記載してください。二人が力を合わせて稲葉山城を攻めるのか、藤吉郎が武人として先頭に立ち、半兵衛の策を取り入れるのか――あなたの選択が藤吉郎の未来を左右します!


次のシーンは、翌日17時に投稿されます。藤吉郎と半兵衛の戦いを、ぜひご期待ください!

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